春、だからなのか。 それとも、一つの山を越えたのか。 あなたに、会いたいと思う。 切羽詰まった焦燥ではなく、 ほんのりと、灯りがともるように。 あなたに会いたくなる。 そんな瞬間がある。 きっと、一番の理由は、 華が「夏になったら引っ越そう」って言ってくれたから。 大きめの部屋を借りて、 華の持っているたくさんの本を、少しずつでも運ぶんだって。 あたしの目の前に、ようやく現実が見えてきた。 一緒に暮らせる日が、来るのだという、実感。 そう思ったら、あたしの焦燥は、 不安の裏返しなのだと、気付いた。 一方的に頼るだけの存在にならないようにしたいけど、 嬉しかった。 目に見える未来は、あたしに、 もう少し我慢しておけるだけの、強さをくれる。
|