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LESSON,1 April,8 2045 プロイセン国 ファンデンブルグ研究室 LESSON.1 「う〜ん」 ブラッドは、テーブルの上に肘をつき、両手で扇形に9枚のカードを開いたまま唸っている。 同じポーズをしていたアンジェラはコーヒーカップを口に運んだ。 「ほら、ブラッド。早くして」 「う〜ん」 と、再び呻き声のようなため息をつき、ブラッドはテーブルの上にオープンになっているカードを眺めた。 ダイヤを集めているヴァレンの前にはダイヤの2と7が捨てられている。 「これかな・・・えいっ」 と、威勢良く、右端から2番目のダイヤの3を叩きつけた。 「はい、私の勝ちね」 ヴァレンが手元の8枚のカードをオープンにすると、 1.2.3.4.5.7.8.9のダイヤのカードが並んでいる。 「あちゃ〜。また負けだ」 「その3は、ヴァレンの本命でしょ?」 「え〜、そうなのか?全然わかんなかったよ俺」 右手で頭の後ろを掻き毟りながら、ブラッドが頭を左右に振った。 「さっきまでのゲームは自分で揃えるだけだったろ?」 「うんうん」 「4組のカードを使うようになって、しかも自分が捨てたので5回連続で、ジ・エンドになるなんて呪われてるに違いない」 「あはは、そうじゃないのよ、ブラッド。これには一種の法則があるの」 ヴァレンは右腕をテーブルについたまま、自分の右手の甲に顎をのせて微笑んだ。 「法則? てっきりヴァレンティーネ様の魔術にかかったのかと・・・」 「バカ言わないでよ、ブラッド。カードゲームに魔術なんてあるわけないじゃない」 アンジェラが呆れたように笑っている。 「それでは、復習してみましょう。 いい?」 ヴァレンは、手前にあるカードで、 1.2.3 2.3.4 3.4.5 5.6.7 6.7.8 7.8.9 と、6種類の組み合わせを作った。 「4組のカードでこの6パターンがあるから、4×6で、24通りの組み合わせがあるのね」 「はい」 「その24パターンから、手元で3組を作っていくとすると・・・こうね」 ブラッドはヴァレンの手元と口元を慌ただしく見ている。 「いい?ブラッド。もし2組が揃っていて、あなたが2.4.5と持っていたら、どれを捨てる?」 「2・・・かな」 「そうね。じゃあ4.5.7と持ってたら?」 「7・・・ですね」 「そうね。ということは手の中には4.5とあるわけでしょ」 「はい・・・あ、そっか 3でも6でもジ・エンドだ」 「そうそう、基本だから覚えておいてね」 LESSON.2 「それでは、次はハートとスペードの2種類の4組で、アンジェラとブラッドの2人で勝負よ」 「はい」 「私は、一戦ごとにあなたたちのどちらかの後ろで見ているわ」 「よ〜し、タイマンなら負けられね〜ぜ」 ブラッドは腕まくりをしてカードをシャッフルし始めた。 「よお、アンジェラ。ランチをかけて勝負するか?」 「あら、ご馳走様。アタシはミラノのパスタ!でも、地中海のシーフードも捨てがたいわね・・・」 「パスタだ?俺は、ウィンナーと黒ビールをご馳走してもらうぜ」 学食 12:30 「やっぱり、フリウーリ地方のワインは情熱的でパスタによく合うわね」 「素敵なランチだわ、ありがとうブラッド」 「・・・ん」 (なんで女ってのは飯を食うときだけは機嫌がいいのだろう ・・・っていうか、学食にワイン持ち込むか?) そんなことを考えながら、ブラッドは、短い返事をし、パスタをフォークでぐるぐる回している。 アンジェラ戦も5戦全敗だった。 目の前では、アンジェラとヴァレンがはしゃいでいる。 アンジェラ・クルツリンガー Angela Kurz Ringer 20歳。 地元の4年制小学校を卒業後、9年制のギムナジウムへ進学。 卒業後、1度目で国家試験のアビトゥーアに合格。 精神科医である父親の影響を受け、家から一番近くにあるローゼンバーグ総合大学医学部へ進学。 身長162cm 体重52�圈_搬押”磧∋舒貎諭� ブラッド・エアハルト Brad Erhart 20歳。 州都にある12年一貫教育シュタイナー学校卒業後、2回目で国家試験のアビトゥーアに合格。 プロイセンでは、アビトゥーアの資格を持てば、自分の望む総合大学を選択することができる。 プロサッカー選手を夢見るも、致命的な怪我で現役を諦める。 その後、整形外科医となることを選択し、ローゼンバーグの門をたたく。 身長188cm 体重85�圈_搬押∧譟�兄弟無し。 「は〜、パスタの味なんて全く感じない。俺、ゲームに向いてないかも・・・」 「あら、ブラッド。そんなことはないわ。悔しさが人を強くするのよ」 「そんなもんですかね。もっとこう・・・なんていうか・・・」 「よほどショックだったのね・・・でも失恋よりはショックじゃないでしょ」 ヴァレンがブラッドの髪を左手でシェイクすると、指先からヴァレンの移り香が届く。 「は〜、いい香りっすね。ヴァレンティーネ様の胸で泣きたいっすよ」 「あはは、私の胸でよければいつでもお貸しするわ。・・・利子はきっちり払ってもらうけど」 「何言ってんのよ、初日から、大の男が・・・ほら、ブラッドもワイン飲んで」 紙コップに、BARONE ROSSOを注ぎながらアンジェラがブラッドに差し出した。 「しかし、アンタ達も大変ね。ジパングに行ったら3年は戻って来れないわよ。」 「え〜、3年もですか?」 「あら?ローゼンバーグ教授から聞いてないの?」 「ええ、まったくなにも」 「呆れた子達ね。恋人や家族にも別れを告げておきなさい」 飲み干した紙コップをトントンと机に当てながらブラッドがヴァレンに尋ねた。 「ジパングに行くのは、俺とアンジェラの2人だけっすか?」 「いいえ、私も行くのよ」 「本当っすか? 嬉しいな〜」 先ほどまで、俯き加減で食欲不振気味だったブラッドがパスタを頬張る。 その様子を微笑ましく眺めながらヴァレンが話を続けた。 「ええ、今のユーニオア・プロフェッサー制度だと、助教授職の任期があと5年しかないから、 3年間の滞在期間中に、私は新しい論文を書き上げて終身在職権を手に入れたいの。」 野心に満ちた瞳でヴァレンが、白銀色の髪をかきあげた。 ヴァレンティーネ・ファンデンブルグ Valentina Fandemblg 24歳。 ローゼンバーグ教授に、学部在籍中に助教授推薦を受け、 卒業論文が、学会に新風を起こし、時の人となる。 身長158cm 体重50�圈_搬押〔気� 「そんな大事なお仕事に、私達2人を選んで大丈夫なんですか?」 アンジェラが不安そうに尋ねる。 「あなた達2人は、とても優秀よ。それに・・・アンジェラ、こっちに来て座って」 ヴァレンはアンジェラを、ブラッドとの間にある席に座ると立ち上がり、 アンジェラの右頬に手をあて左側の耳元で囁いた。 「アンジェラ、あなたは・・・とても可愛いわ。今すぐ抱きたいくらいよ」 「じゃあ、私は研究室に先に戻るわ、14時までゆっくりしてていいから、ブラッド ご馳走様」 「はい」 ブラッドは白衣を翻し歩き出したヴァレンの後姿を、ヒールの音が聞こえなくなるまで見送った。 「はあ、綺麗だな〜ヴァレンティーネ様は・・・ ん? どうした、アンジェラ。昼間っから酔っぱらったのか?」 アンジェラは紅潮したまま俯いていた。 |