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一人暮らしをしていた時に買い集め、実家の押入れで眠っていた陶器をせっかくなのでパースに持っていこうと思って詰め込んだらものすごい重さになってしまった。それを見かねて成田まで送ってくれるという妹と、検疫で荷物を開けられたら怪しまれるのではないかとちゃんとうまい言い訳も用意して、早朝家をでて成田へ向かった。
千葉駅から成田への電車から見える田舎の風景も空港の雰囲気もとても好き。既に楽しい旅行ははじまっている。土曜日の空港は忙しくて、妹とクロワッサンエクスプレスでコーヒーでも飲んでいこうと言っていたのにすぐにお別れとなった。わたしが見えなくなるギリギリのところまで追いかけてきて手を振る妹を見てつくづく姉妹でもタイプが違うよなと思った。
シンガポール航空の機内で席に着くなり眠ってしまった。起きて赤ワインを飲み、また眠っての繰り返し。そのうちにヴェジタリアンミールが運ばれてきた。フェタチーズとほうれん草のラザーニャやグリルした野菜が入っていて機内食にしては上出来。隣の座席には人懐っこいシンガポール人の女性が座っていて起きてはあれこれと喋った。「パースの帰りにシンガポールに寄るなら電話してくれれば案内するからね」と言って連絡先も教えてくれた。
ガラスの向こうは雨季でじめじめしているだろうシンガポール空港に降りて、彼女と別れて一人乗り換えのゲートに向かった。ひたすら座って時間が過ぎるのを待っていると中国系の50代くらいの女性が近寄ってきた。彼女はマレーシア人で同じくマレーシア人と結婚しパースに6年前に移り住んで永住権も持っていると英語で話していた。が、読み書きが全く出来なくて入国カードが書けないのだと言う。「じゃぁわたしが書きましょうか?」と言うと嬉しそうにペンと入国カードを差し出してきた。読んで質問し答えを書き込む。日本人のわたしには理解し難いのだけれど英語圏に住んでいても中国人コミュニティは大きいので彼女達は一切英語ができなくとも生きられてしまう。
シンガポールからパースへは約5時間。また赤ワインを飲んでうとうと眠ってを繰り返した。もうすぐ日付が変わる頃やっとパースの街が見えてきた。パースの夜の上空を飛んでも真っ暗なのではないかと思いこんでいたけれどそんなことはない。空から宝石を見ているようだった。着陸するとマーティンがいつも小さな男の子のような顔でサンドイッチを食べながら、夢中で行き交う飛行機を見ている展望台が見えて心がはやった。
イミグレーションでは質問攻めにあったもののなんとか通過し、たった2ヶ月で5kgも痩せてしまったマーティンに再会。家に着くと反対に丸々太ったミケが喉をゴロゴロ鳴らして迎えてくれた。お願いした通り家中ピカピカに磨いて、冷蔵庫には色々な種類のチーズを用意してくれていた。スーツケースから沢山の陶器をだすと驚かれ、「君はまるでヨーロッパの老人みたいだ」と言われた。彼のお祖母ちゃんも沢山食器を集めてそれを毎日「綺麗だ」と言って眺めながら亡くなって行ったらしい。「君は陶器キチガイだ。空港でスーツケース開けさせられたら怪しまれるよ。何て説明するつもりだったの?」と言われたので「わたしの友達は陶器キチガイで日本から持ってきてとしつこくお願いされたので彼にあげるのだって言おうと思ってたよ」と答えるとニヤニヤと笑っていた。