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池澤夏樹の「明るい旅情」という紀行エッセイより。
ヤップ島という太平洋に浮かぶ小さな島に住む生物学者でエコロジストでもあるアメリカ人女性とその島のお話。
この島の人達は果物を餌とするコウモリを捕まえてはシチューにして食べていた。ある日それに目をつけた観光業者がそれを高級レストランなどのメニューにすることを思いついた。これが当たりコウモリを捕まえれば良いお金になるのでみんなどんどんコウモリを捕まえた。やがてコウモリが少なくなりこの島の生態系が狂ってくることを心配した彼女が「コウモリ狩禁止」を遠慮がちに提案し結局この提案がのまれた。現金収入源を失った島の住人に恨まれるのではないかと思っていた彼女に逆にみんな「ありがとう」と言った。
島の人達だけが自分の分だけを捕って食べているときは問題もなかったけれど商業化したら絶滅に追いやったというお話。小さな島で全ての物事の循環、生態系を目の当たりにして暮らしている人達だからこそ人間が生態系に手を出すことは全てを狂わせることになるのだとこのコウモリの一件ですぐに学ぶことができたのではないだろうか。日本のように何がどこから来ているかわからずスイッチを入れれば電気がつくような環境ではわかりにくい。
パースでは最近ある地域で昔イギリス人がこの孤立した大陸にハンティングのために持ち込んで放し、増えてしまったキツネを狩ることに決まった。悪さをするらしい。歴史の本で読んだアボリジニだけが自然の掟を考慮して狩をして暮らしていた時とは違い植民地開拓が始まったあたりから既に生態系はバランスを崩している。そしてそれを人間が取繕おうとする。一度崩してしまった生態系は完全に元通りにすることは難しい。