歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年12月30日(土) 0歳の子供の歯の救急治療

数年前のちょうど今頃、うちの歯科医院は正月休みに入ったのですが、応急処置をして欲しいという連絡が入りました。電話で話を聞き、直ちにうちの歯科医院へ来るように指示を出した歯医者そうさん。

電話からほぼ20分後、患者はお母さんに抱かれてやって来ました。実は、今回の患者はまだ0歳10ヶ月の赤ん坊だったのです。お母さんに抱いてもらいながら診療台に座ってもらい、早速患者の歯をみたところ、下の前歯2本の周囲歯肉から出血があり、歯そのものが唇側にほぼ水平に傾いていました。これは亜脱臼と呼ばれるもので、完全に歯が抜け落ちていないものの、歯肉や歯を支えている線維によって何とか繋がっているだけで、顎の骨から抜けている状態だったのです。

話を聞いていると、赤ん坊の患者はアルミ製の箱のようなものを噛んでいたようで、箱の隅に下の歯がひっかかり取れなかったとのこと。そこで、お母さんが強引に取ろうとしたところ、歯が前に傾き、亜脱臼を起したようだったのでした。
このような場合、一刻も早く亜脱臼した歯を元の位置に戻してやらないといけません。僕は、時間勝負と判断し、麻酔無しに強引に歯を元の位置に戻してやりました。幸い、歯は何とか元に戻ったのですが、仕方がなかったこととはいえ、赤ん坊の患者は大泣き。

「さぞ痛かっただろうなあ、ごめんな、でも、こうしないと治らないからなあ!」
そのようなことを言いながら、更に止血を行った歯医者そうさん。

何とか亜脱臼した歯は元に戻ったものの、術後が心配でした。本来なら、亜脱臼した歯は元の位置に戻せば他の歯を利用して固定してやらないといけないのですが、患者は0歳10ヶ月の赤ん坊。まだ、他に歯が生えてきていないため、隣の歯と固定ができません。しかも、患者は哺乳瓶で飲んでいるような状態。僕は当日は哺乳瓶を避けてもらい、翌日からは様子を見ながらなるべく亜脱臼した歯の位置を避けながら哺乳瓶を使うように伝えました。そして、何回か経過を見ていく必要があることも伝えたのです。

幸い、患者は直ぐに泣き止み、歯の状態も落ち着いているようだったので、帰宅してもらいました。その後、何度か経過を見ていったのですが、亜脱臼した歯は若干唇側に傾いているような状態でしたが、上の乳歯とのかみ合わせも何とか問題なく、落ち着きました。ほっと胸をなでおろした歯医者そうさん。

それにしても、赤ん坊というのは何をしでかすかわかりません。赤ん坊をお持ちのお母さん、日頃から何かと子育ては大変かと思いますが、もし歯のことで何かトラブルが生じたようなら、迷わず歯医者を訪問するようにして下さいね。時間が勝負ですから。


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