カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来

雨は小休止 グレイの雲の隙間から
古い記憶のひだが 湿った風にほどかれて
息を吸うこの瞬間に
懐かしいどこの時代にも
身軽になって移り行けそうで もういちど
深く息を吸い込むと 梅雨空に小さく飛ぶ 黒い粒が
アァ アァ アァ
先程までの しとしと雨に濡れたのか カラス
鈍く光る羽 木炭のよう
信号機の上から王様のようにあたり見回し
国道をまっすぐ吹く風にまた 高く舞い上がり
再び泣き出しそうな この夕方を
ナナメにゆっくり切って行った
時は戻らない
覚えてる記憶も 懐かしい雨のニオイも
みんなやりなおせない と
嫌われ者の黒いカラスが鳴く アァ アァ アァ
だけど今日 その姿は力強く
いっそ 私も黒く染めて欲しくて
グレイの雲の間
飛び去るカラスを追いかけた
natu

|