カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来

しじゅうからの 鳴く朝
口にすれば きっと軽くなる
ちょっと 嫌なことが あったの
ちょっと ツライことが あったの
ココロの糸が するする ほどけてゆく
母は ただ 刺繍糸で 手仕事を
柔らかな布は
いつか 茶色い染みとなってゆく
ワタシは ただ コトバを並べ
ベランダで 風に散らすだけ
時の流れに 意味を問うても
返事は来ない
積み木 重ね 崩れ 繰り返す
また迎える 次の朝
刺繍糸 コトバ それぞれが 時を紡ぎ
黙って 散り行く
針のひと目が やがて小さな花を 作るのを
飽かずに 眺めていた
母は 幼い日を 刺繍の草花に
凝縮していた
natu

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