☆空想代理日記☆
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目醒めとともに感じたのは部屋に充満した湿気と大雨が地面を叩く音だった。
ものすごい湿度だったので、自分自身が蒸し焼きになってしまったのではないかと錯覚したほどだった。
例のごとく雨に濡れると頬の内側を強く噛んでしまう癖のある不逞者、一歩たりとも外出しないでいた。
不逞者の部屋の横には小さな庭があって、人間の背丈よりもちょっと高めな植え込みがあるのである。
その植え込みが音をたててゆらゆらしていた。普段はそんなところが揺れるはずもないので、これはまさしく泥棒との対決だと考えられた。
窓から外に出て跳び蹴りを喰らわせようかと思ったが、雨で濡れてしまうので断念した。傘をさして外に出ていって、人体を破壊する技を屈指して泥棒を退治しようと思ったが、足許が汚れてしまうので諦めざるをえなかった。
しばらく植え込みの揺れを眺めていると、「ちょぎゃああっはあ」と悲鳴があがった。
肩がびくっと跳ねて心臓が停止しそうになったのであるが、奇跡的に心臓は停止しなかった。
細い道なき道を通って近道しようとしていたおばさんが豪快に転んでいただけだった。
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