☆空想代理日記☆
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地震の影響がどうか定かではないのであるが、町全体が緊張してアガっているというより、緊張しすぎてサガっているといった雰囲気だった。
テレビ画面上部に速報が出るたび、そこに視線を奪われた。次にいつ速報がくるのかと身構えていたら、12歳くらい老けてしまった感じがしたのだった。
地震のあった能登のほうにも友人が住んでいる。この友人というのが曲者で、趣味はお賽銭泥棒らしいのだった。被災者でありながら泥棒稼業に手を染めるのではないかとひやひやした。
「寝言はネタで言え!」
電話口の向こうの友人は元気そうにこう言った。ただし、鼻の穴に指を入れているであろうことは声質でわかった。
憎まれ口を叩くほど、地震のダメージは深刻なのだろうと察知した。
「何か必要なものはないか? あるんだったら不逞者にまかせなさい」
友人は照れくさそうな笑い声をあげていたが、ルーレットが紛失した人生ゲームを送るつもりだった。サイコロでも代用すればいいと考えていたからだった。
人生ゲームでサイコロを転がして、人生そのものも転がっていけばいいという呪いは、無事に届けられるだろう。
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