Skipper Johnの航海日誌

2007年11月12日(月) 「どくろ杯」 金子光晴 (中公文庫)

学生の頃「どくろ杯」を読んだことがあったのですが、当時の私では詩人の金子光晴の奔放(というか、行き当たりばったり)で自堕落な生き方を許容できなかったようで、途中で読むのをやめて投げ出していました。

最近たまたま、コラムの編集者や、ウェブポータルの社長、そしてトドメは大学の恩師まで「どくろ杯」の話題が重なって、これは再読せねばなるまいと取り寄せて読みました。

むむむ、深いです。詩人の感性というのは、とても普通の文章書きでは表現できないような細かい空気のようなものを描写しているのに惹かれます。

金子のとんでもない「ダメダメぶり」の成れの果てで上海へ逃れることや、カレシを作ってしまった奥さんも上海くんだりまで夫についてきて、一緒に下手な絵やエロ小説を売ったり、お金持ちに金を無心したりして何とかお金を作りながら、目指すパリの途上であるシンガポール、インドネシアに渡るというあらすじです。

驚くのは、この自伝小説は金子光晴が70歳を過ぎて、40年も昔の体験を追憶しながら書いたものなのに、まるでさっき見てきたかのような強烈な描写、そして匂いのようなものが漂っていることです。

『(上海の)街の体臭も強くなった。その周期は性と、生死の不安を底につきまぜた、蕩尽にまかせた欲望の、たえず亡びながら滲んでくる悩乱するような、酸っぱい人間臭だった。』

と、当時の上海からかもし出される街の雰囲気を、匂いを通して描写するこの感性。。。今の上海にも一部通じているのだなあと、思いました。


 < 過去  INDEX  未来 >


Skipper John