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どんな状況下でも基本を守れ! - 2008年02月02日(土)

以前、救助隊長だったころ、一夜に7件の連続放火があった。
最初から放火と断定して出動するわけではないのだが、度重なる出動指令に放火を疑わずにはいられなかった。

ましてや、今回の出動に関しては・・・・
それは、夜10時過ぎ建物火災の第一報から始まった。
駅前に近い建物の密集地から発生した火災は、約1時間以上を費やし鎮火せしめた。
救助隊は現着と同時に建物周囲を確認、付近住民より逃げ遅れ者の把握等に着手する。
消火作業の疲労感と安堵感が入り混じるなか撤収作業が始まる。と、その時、無線機に出場指令が入る。
ホース等の撤収を中断し、火災現場に向かう。
現場は長屋の二階部分から発生、即座に三連はしごを架ていし、てい上より注水を開始する。
この時点では、まだ余裕ホースを若干積載してあったので放水までには通常の火災として対応が可能であった。
ほぼ鎮火せしめたとき

「北側が燃えてるぞ!」との叫び声!
「そんな馬鹿な!鎮圧しているはず・・・・」 

ふと、北の方角に目をやると飛び込んできたのは、真っ赤に燃え出す民家。
救助隊は、空気呼吸器のみを着装したまま現場に走る!
当然、消防隊は間に合わない。多分この時点でホースの残数はゼロに等しかったであろう。

現着後、逃げ遅れた者の聴取に入る。
そこに、一人の男性が他の者に制止させられている場面に出くわした。
男性は、この家の主人で

「妻と子供の姿が見えない!この中に・・・」 

と叫びにも似た声で燃えさかる家の中に飛び込もうとしていた。
「待ってください!私たちが確認しますので、ご主人はもう一度、心当たりを確認してください!」
と促し、周囲建物の確認に入る。
すでに家屋は進入には不可能な状態であり、ましてや消防隊の援護は当てにはならない!
注水援護が欲しい!
「どこにもいません!」
隊員に空気呼吸器の面体着装を指示、かろうじて残る一部屋の検索に着手しようと屋内に進入する。
室内は熱気と煙で視界不良、前方には今にもこの部屋を飲み込もうと待ち受ける炎・・・・

「これ以上は、注水援護なしでは無理だ!」
「脱出!」

と隊員に肩に合図!
部屋を脱出し、ふとその部屋に目をやると、そこは火の海・・・・・
隊員の命を預かる隊長として、身震いがした。
怖さをも感じた。
現場は、修羅場じゃないか!
冷静な判断無くしては、安全は守れない!
自分に叱咤した! 基本を守れ!部下を殺すな!冷静になれ!

「もう一度、心当たりに連絡を取ってください!」と主人に促した。
「居ました!実家のほうに・・・・」
「あゝ・・・・」  力が抜けた・・・・

無線機に・・・・「○○町○○、建物火災発生」
隊員を集合させ、確認をとる。
『どんな状況下であっても基本に戻れ!』と自分自身に渇を入れ、救助工作車に飛び乗る。

この夜、7件の連続放火に出場・・・・・




...




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