不用品 買取 家庭教師 celeste blue

celeste blue



びっしり詰まる

2009年02月11日(水)

「オレの部屋にはジャズのレコードが壁にびっしりあるんだ」

学生時代のアルバイト先の社員さん。
ジャズが大好きで、いつも深夜になると店にジャズをかけながら、ジャズについて熱く語ってくれました。
私は、まだジャズという音楽のよさがわからず、「ふぅん……」とあいまいな返事だけ。
それでも、同じシフトの日には必ず私の担当していたカウンターに来て、ジャズを語っていきました。

そんなある日のバイト中、私が北海道をひとり旅する計画を話しました。

「札幌に行くんなら、オレの実家に泊まっておいで。オレの部屋のレコード、見ておいで」

予定では、札幌は通り過ぎるはずでしたが、ふとその社員さんの部屋の壁にびっしりと積まれているジャズのレコードが気になり、そのなかの1枚だけでも聴いてみたくなりました。

そして、初めての北海道ひとり旅。
札幌の実家には、今はお兄さん夫婦が住んでいましたが、その日はお兄さんは出張で、お嫁さんと私のふたりだけ。
なぜかちょっと言い出しにくかったけれど、レコードを見させてほしいと頼みました。

すると……。

「レコード? あ〜、あれ。もう何年も前に捨てちゃったわよ〜。邪魔だもん」

「………え゙?」

旅が終わり、悩みながらも、もうレコードは捨てられていた話をその社員さんにしました。

「そうか。そうだよな。ま、いいさ」

もっと落ち込んだらどうしようと思っていましたが、思ったよりもあきらめも早く「レコードよりCDのほうが音がいいからね」と、開き直っている様子。よかった。
そしてその後も変わらず、私の隣に来てはジャズの話をしていきました。

でも、ひとつだけ変化があったのは「オレの部屋のレコード」の話がいっさい出てこなくなったこと。

今もジャズを聴くと、そのときの社員さんの気持ちを想像し、そして見たことがないその社員さんのレコードのびっしり詰まった部屋を思い浮かべます。

今、どうしているのでしょう。
今なら、少しはジャズの話で盛り上がれるのにな。
おーい。
生きていますか?

おやすみ。

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celeste [MAIL] [アルバム「紺と碧」]

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