不用品 買取 家庭教師 celeste blue

celeste blue



しこり

2009年08月22日(土)

「もういいの? もうこれでいいの? 満足だったの?」

今にも息を引き取りそうな父親に、子どもたちが語りかけていました。
子どもたちといっても、もうそれぞれが独立して家庭を築いています。
そして、明け方近くの電話で呼び出された家族。

思いがけず、その部屋に入り、私もいっしょに彼らの父親に呼びかけました。

「しっかり呼吸をしてくださいよっ!」

家族が心電図を見つめながら、その数値を見ながら、その死期を悟り、でも、奇跡に期待する。

私ができることは、何もありませんでした。
その場にいると、走馬灯のようにある日の出来事が心をいっぱいにします。

呼吸の音。
心電図の音。
そして、耳では聴き取れない、ある音。

私が、どうして、そこに、いられましょうか。

人生に後悔していないと公言している私。
後悔は、言い訳だから。
でも、これまでの人生の唯一の後悔といえるものは……。
「もっと、あのとき、語りかけたかった。もっとあの時、皮膚に触れたかった。もっとあのとき、あの瞬間のことを知りたかった」

今日、集まった家族は、おそらく、不満なく帰ってもらえたと思います。
私のように、いまだに、しこり、を、残すことは、ない、でしょう。

おやすみ。


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celeste [MAIL] [アルバム「紺と碧」]

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