先にシャワーを浴びた彼がダブルベッドの端に座りました。
私は冷蔵庫から缶ビールを出して、グラスに注ぎました。
彼にグラスを渡してバスルームへ行こうとすると、
「ここにおいで。」
と彼が私に声をかけました。
「シャワーを浴びるの。」
「いいから、そのままおいで。」
彼は私の腰を引き寄せると、私を自分の膝の上に座らせました。
彼の大きな右手が私の背中、ウエスト、胸を優しく撫でました。
私達は見つめ合い、熱いキスを交わしました。
愛し合った後も、私達はいっぱいお喋りしました。
アカデミー賞6部門を受賞した映画を観た後で、
私達は二人ともテンションが上がっていました。
彼はいつになく雄弁に映画の話をしました。
私が時々睡魔に襲われると、
「おい、聞いてるか?」
と彼が声をかけるので、
私は眠気をこらえながら彼の話を聞いていました。^^
夜はお寿司屋さんへ行きました。
私達のお気に入りの板前さんが他店へ移ったと聞いて、
少し残念な気持ちになりました。
この日は遅い時間から出かけたので、
彼は私を車で送るまでの時間を考えて、
「今日はビールだけにしておこう。」
と言いました。
お部屋に戻るエレベーターの中で、彼が急に思いついたように、
と言いました。
私は嬉しくなって、彼が呆れるほどはしゃいでしまいました。
ベッドの中で、
「Tさんは何処へ行きたいですか?」
と私が聞くと、
「理沙子と一緒ならどこでもいい。」
と彼が言いました。
彼の言葉を聞きながら、
もし彼と遠い所へ行ったら、
もう二度と帰りたくなくなるだろうと思うと、
私の胸の中で嬉しさと切なさが微妙に交じり合うのでした。
私達の恋が気づかないうちに少しずつ色合いを濃くしていることに、
後戻り出来ない寂しさを感じてしまうのは私だけでしょうか。
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