Stand by me,please my friend
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この日は現地へ行くことを断念したけど、そのことを決めた直後にUstreamで中継されることが決まった。緊張しながらPCの前で待ってた。開演時間を少し遅れて、黒いシャツを纏った近藤さんがふらりと現れた。いつものように赤いギターを抱える。
最初に聴こえてきたのは『静かな世界へ』『荒野を抜け、そして戻る』から始まる1stの曲たち。ああ、今日のライヴは近藤さんのこれまでの歩みなんだ、と感じる。『少年』を聴くと、それを初めて聴いた柳川のことを思い出す。川下りの船頭さん、きっと昔からあるであろう商店。あの白いカフェ。また行きたいな。この日はエレピじゃなくてちゃんとしたピアノで、『春風』や『小さな夜を抜けて』、以前からやってるけど音源になってない曲も聴けた。
2ndの曲では『草原』がダントツでかっこよかった。ブルージーな曲調で。『ここから』はいつ聴いても大好きな曲。もうこの時点で満足してしまう。
カバー曲も何曲か。個人的に一番嬉しかったのが、古明地さんの『about a boy』。今ライヴをお休み中の古明地さん。いつかまたツアーに出てくれたら良いな。この間、ふと思い出したばかりだったから、古明地さんのうたを唄ってくれて嬉しかったな。
後半は音源になってない最近の曲たちを。最近まで、ここ1年くらいの曲は『雨色のギター』が一番だと思ってたんだけど、『ディズニーランド』がそれを抜きそう。なんだか涙腺にくる曲なのです。歌詞がまだきちんと分からないのだけど、涙を隠さなくて良いよ、そんなことを唄っていて、頭をなでられてるような感覚になる。他にも音源になっていない曲はたくさんあって、ライヴでしか聴けないのがすごく悔しいので音源になってほしい。そしたら色んな人に伝えられるのに。
ここまででたっぷり3時間。このタイミングで思ったのが、いつもならアンコールにとっているような曲が、もう全て唄われてて無い、ということ。胸がざわついた。
軽口を言いながら出てきたアンコールで鳴らされたのは、私が愛するあのバンドの曲だった。
10年前、高校生の自分に言ってやりたい、「知ってる?あんた10年後、『HEIDI』聴いて泣いたんだよ!」
グレフルでのワンマンをはじめたのは、まだピールアウトをガンガンにやってた頃で、だから、これは外せないだろうと。そんなことを言いながら、解散してからほとんど初めて、彼はあのバンドの歌をうたった。
『APRIL PASSENGER』『旅人の歌』のときは本当に嗚咽が出るくらい泣いた。
I do.
You do.
We do.
僕達はここにいる、僕はそうありたい。
彼の根本にあるものは、あの頃と変わってなんかない、この曲を聴きながら、改めてそう感じた。
遠くで歩きだす旅人よ、歌は聞こえ「た」かい?
彼はそう唄った。聞こえる、じゃなく、聞こえた。そう、ピールアウトの曲は今を進行形で進んでいるわけじゃない。でも、あの頃ピールアウトの曲は確かに聴こえてた。近藤さんが、一瞬喉を詰まらせた。ツイッターでは高橋さんが「別の場所にいても俺も叩いてる」と叫んでた。泣くだけ泣いたら、心がふっと軽くなった。同じくらいの時間に、愛すべきドラマーは「解散ライヴを超える気だ、どんどんやれ!名曲もっといっぱいある!」と戦友を鼓舞していた。東京には行けなかったけど、彼のリアルタイムの言葉を聞けたことは嬉しかったし、誇らしい気持ちになった。
この時点で22時になろうとしてたと思う。「みんな終電の時間分かるよね?僕も大人なんで23時には終わりますんで…」と言いながら、唄えるところまで唄い続けていった。「これが聴きたいのよ!やろ?」と、『爆裂世界』『GOODBYEBLE』や『ROLLS』のフレーズを弾いたり、ちょっと唄ったり、新旧いろいろな曲を唄ってくれた。サイトにアップされたセットリストを見ると、8枚のアルバム全てから1曲は必ず唄っていた。最後に唄った曲は『BE』。そこにいたのはピールアウトのコンドウトモヒロじゃなく、「近藤智洋」だった。あの頃の私と、今の私が焦がれるロックンロールがそこにいた。23時前になって、「じゃあ…」と、まさに「時間になったから終わらせた」という言葉がしっくりくるような終わり方でこの日のライヴは終わった。まだまだ唄い足りなさそうだった。
正直、どんな気持ちになるか分からなかったけど、自分でも意外なくらい清々しい気持ちでいる自分に驚いた。私がソロを聴くようになったのは、ピールアウトという土台があったからで、無意識のうちにピールアウトの影を追ってた、それは自覚してた。このライヴを見て、ピールアウトという宝物を胸に刻んで、そこからまた新しいスタート、って本当に思えたんだと思う、たぶん。言葉にするのは難しいけど、私はこれからも彼についていこうと思った。HERE,NOT SOMEWHERE。彼の音楽は今も「ここ」にいる。
カオリ
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