十三、愛の終わりに
ぼうぼうとした山頂の草原(くさはら)に立って 春がすみの下界を眺めると 懐かしい故里が見える
ああ その名は三井楽町
町の端を流れる正渕川(まさぶちがわ) 君と一緒に遊んだ小学校 二人で登校した中学校 十八になって二人追われるように 去ったこの町
あの日いつまでも一緒にと 約束を交わしたバス停留所
ああ それなのに君との永久(とわ)の別れ 二十年の月日はまたたく間に過ぎた
一人身の悲しみが身にしむ 君を想えば痛恨の思いがする
(もう私のことは忘れていいからね)と言った 君の最期の言葉 君のほおを伝った一筋の涙
私には神はなく たとえば清冽な冬の星を見つめながら ただ人生の終着を待っているはかなさ
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