悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年03月06日(木) 13、愛の終わりに

十三、愛の終わりに

   ぼうぼうとした山頂の草原(くさはら)に立って
   春がすみの下界を眺めると
   懐かしい故里が見える

   ああ その名は三井楽町

   町の端を流れる正渕川(まさぶちがわ)
   君と一緒に遊んだ小学校
   二人で登校した中学校
   十八になって二人追われるように
   去ったこの町

   あの日いつまでも一緒にと
   約束を交わしたバス停留所

   ああ それなのに君との永久(とわ)の別れ
   二十年の月日はまたたく間に過ぎた

   一人身の悲しみが身にしむ
   君を想えば痛恨の思いがする

   (もう私のことは忘れていいからね)と言った
   君の最期の言葉
   君のほおを伝った一筋の涙

   私には神はなく
   たとえば清冽な冬の星を見つめながら
   ただ人生の終着を待っているはかなさ

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