悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年03月22日(土) 5,独り言/悲の詩集

一、独り言

1、夏休み
  生徒の居なくなった
  学校の裏庭には
  やり水の不足した
  しおれた植物が並んでいた
  そのそばで死神が
  やさしい笑みを浮かべて
  立っていた

2、私はムクゲの白い花が好きだった
  その純白の花に心ひかれて
  散りゆく花のはかなさを知った
  無垢のさびしさの中で
  死神がもう少し
  生きろと言った

3、三月の雨の夜
  甘ったるい水仙の下で
  蛙が一匹
  独り言をつぶやいた
  (小川で水を飲みすぎちまった
  そのうえ一日中雨だときている
  ゲップが止まらなくて
  苦しいんだ
  死ぬのはもっと苦しいだろうな
  死ぬのはいやだな)


小学4年生の時だった。ある同級生と対立していた。
夏休みに入って、突然、死んだ。私は内心喜んだ。
しかしそれと同時に、自分を含めて、すべての人間が、
死ぬ運命であることに、気付いた。

二、悲の詩集

1、悲哀(1968)
  死より悲しいことはない
  涙がぽたりぽたりと落ちる
  次次に 枯れた花弁(はなびら)の散るように

2、悲しみ
  涙はお前の小さな悲しみから
  一しずく お前の淡き悲しみから
  わたしは愛を求めていたのに
  わたしは詩を書いていたのに
  心よ お前の悲しみから
  わたしの頬はぬれている

3、悲しみ
  眠れ眠れ もっと深い眠りのなかに
  悲しみを捨てろ 忘れられない悲しみを
  刻まれすぎた悲しみを
  今は この心に 血が滲む(にじむ)
  眠れ眠れ もっと深い眠りのなかに
  悲しみを捨てろ

4、哀しさ
  僕はお前と闘争する お前は僕と対立する
  傷つけ合い苦しめ合い そして滅んでゆく
  人間の哀しさよ 愚かさよ

5、悲劇
  自分の重さに 自分が壊れる

  
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