悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年03月23日(日) 7、 恋/ある男の一生

かくも、個と個の対立は、険しく、絶望的である。<相手の気持ちを考えることなく、愛しつづけること> <一方的に愛することで、自己満足すること>それは愛ではなく、一途な恋ではなく、利己主義である。
ストーカーも、愛とは正反対の利己主義である。そこでは、自己愛のもとに、自己のすべての行為が、承認され、肯定され、実行される。

私は、現代における、愛の非情さ・冷徹さを、感じる。
そして、個人の自立(独立・自由・利益・競争・対立・孤独等)の厳しさを、感じる。そして、過当競争を感じる。

一、恋

くるしみのなかにあって 自分のひとりの力だけで
生きようとした女と かぎりなく深い愛で
支えようとした男 何もしないことだと悟り
消えた男 そのことがわかるまでに
三十年の月日が要った

愛を貫いて一生独り身だった男の
愚かな話である 男は幸せだったかもしれない
一生ひとつの愛に しずかに生きたのだから

女はただ迷惑に思った
男の行為は 何の役にも立たなかったし
なんの報いもなかった
男は何の報いも求めてはいなかった

二、ある男の一生

1、そのひとは 愛されることがなかったので 愛することもなかった

2、思春期になって 人生に愛が必要になった時に
  生きるために 愛されるには
  どうすべきかを考えた
  名案はいくつもあった
  が、実効性のあるものは、一つもなかった
  あれから 数十年 すぎた
  心に 孤立と疎外の深い溝が 残った

3、壮年期になって 社会生活に 人間関係に
  愛が必要になった時に考えた
  愛すればいいのだ 愛し返してくれる
  が、精神的外傷が それを阻害した

4、そのひとは 愛することがなかったので 愛されることもなかった

  




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