悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年04月13日(日) 1、月 2、月 3、月

原風景  酷寒のオホーツク海 凍てつきて
     鋭き三日月 冴えわたりけり

1、月


かなしい夜になると 冬の夜(よ)の寒さの中で
月が冷たく光っていました
鋭角の月 凍えていました 青ざめていました
風はそよぎ 樹葉(じゅよう)はささやく
無音より 静寂なささやき
張りつめた空気の中に
私は一人 冷徹に
精神を統一していました

冬枯れの林の上に 丸い月が
さびしい溜め息をついて
白い光を放ちながら
つめたく 鮮明に 輝いていました
静かな心を映して 美しく 懸かっていました

暮色の中に 白い月が
ぼんやりと光っていました
やがて 空は 闇につつまれて
月は皓皓(こうこう)と 地上を照らしました
終夏(しゅうか)の 頭上に広がる 恐ろしい闇を見れば
おびただしい 大小の光の粒が 点在しています

2、月


自立した精神
内省する月はつめたい
冷徹な孤高の月は
歴史を見ていた
長い時間の中で
その冷静さによって
表層の騒動を消去し
深層の真実を見つめてきた
封建制の人間性の抑圧
資本主義の欲望の狂気

月の美質
その姿は水に映る
その静寂は風のそよぎの中にある
深い沈黙を守り
けっして嘆きの言葉を発しなかった
月 その静寂は天心にあって
地上に降り注ぐ

3、月


日は沈みゆき
想い出は遠くに過ぎ去り
冴えわたる月 凛冽(りんれつ)な星
天の中心を占める月
闇の中でじっと動かぬまま
静かに光芒を放つ月
荒涼とした黒い森の道は
ただ一つだけで 他(ほか)になく
その静寂を進むほかにない

生物が迷いの世界を 生き変わり
変わり続ける
輪廻のたどりを断ち切り
過酷な運命を断ち切り
静寂のなかに沈みゆく

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