1、一つのしあわせを求めて/一つのしあわせを失ったひと あるいは一つのしあわせを求めて/すべてを失ったひと
2、人は生きて/生涯の意義を知らないまま/ 時はおとずれて/終わる 目的は果たしただろうか はたして/目的はなんだったのか すべてが終わるとき/人は考える
3、優美なる女(ひと)よ うす青く晴れ渡る/初春の風にゆれる/ 白いモクレンの花よ 君は私のしずかな内界に住む 君はけっして/色褪せることのない/ 鮮明なイメージ 君は初恋の記憶 理想化された初恋の記憶
4、わたしにも/人並みの青春があった いまは寂寥の海に/沈んでいる もう壮年の強い意志はなく/ いまはただ/寂寥の海に/沈んでいる
5、(朝)朝霧のなかから/村落は現れて/ 透明な日射しが射しこむ 美しい朝がきた 夏の濃い緑は映(は)えて/ 上流の水はつめたく清い しずかな美しい朝がきた
6、(秋)秋の空はあまりにも/ あっけらかんとしているので/ ナイフをキラキラさせて/ 脅かしてやった 赤トンボはあまりにも/のん気そうなので/ 僕も空を飛べると/確信した だが/落葉(らくよう)が/ ハラハラと散るので/ 死の影におびえた
7、(ニ月)雪の降る日は冷たく/風の吹く日は寒く/ 花は一輪も咲かず/鳥は鳴かず/ 昼は短く/寂しさは深い
8、(冬)寒空に/すべてを落とした裸の木 陽光を浴びる若葉/香り立つ花はない さびしさやつらさに耐える人 冬の朝にひとは清く/ その明瞭なる景色のなかに/真実を見る
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