悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年04月20日(日)    1

1、一つのしあわせを求めて/一つのしあわせを失ったひと
  あるいは一つのしあわせを求めて/すべてを失ったひと

2、人は生きて/生涯の意義を知らないまま/
  時はおとずれて/終わる
  目的は果たしただろうか
  はたして/目的はなんだったのか
  すべてが終わるとき/人は考える

3、優美なる女(ひと)よ
  うす青く晴れ渡る/初春の風にゆれる/
  白いモクレンの花よ
  君は私のしずかな内界に住む
  君はけっして/色褪せることのない/
  鮮明なイメージ
  君は初恋の記憶
  理想化された初恋の記憶

4、わたしにも/人並みの青春があった
  いまは寂寥の海に/沈んでいる
  もう壮年の強い意志はなく/
  いまはただ/寂寥の海に/沈んでいる

5、(朝)朝霧のなかから/村落は現れて/
  透明な日射しが射しこむ
  美しい朝がきた
  夏の濃い緑は映(は)えて/
  上流の水はつめたく清い
  しずかな美しい朝がきた

6、(秋)秋の空はあまりにも/
  あっけらかんとしているので/
  ナイフをキラキラさせて/
  脅かしてやった
  赤トンボはあまりにも/のん気そうなので/
  僕も空を飛べると/確信した
  だが/落葉(らくよう)が/
  ハラハラと散るので/
  死の影におびえた

7、(ニ月)雪の降る日は冷たく/風の吹く日は寒く/
  花は一輪も咲かず/鳥は鳴かず/
  昼は短く/寂しさは深い

8、(冬)寒空に/すべてを落とした裸の木
  陽光を浴びる若葉/香り立つ花はない
  さびしさやつらさに耐える人
  冬の朝にひとは清く/
  その明瞭なる景色のなかに/真実を見る

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