9、(夜)暖かなベッドのなかで/丸く眠っていると/ 窓の外に/月光が感じられ/ さみしげなしあわせを思う すべての風物が/わたしを中心に円形に捉えられ/ 静かな時は過ぎる/さみしげでしあわせな夜/ 月は山上に輝いて/すべての風物は斜めに/ 暗く蒼い影を落とす 冷酷な風は途絶えて/ 無風の大気が清く澄んで/ 満天の星星がうつくしい
10、(静かな夜)夜の間中/雪はしんしんと降り積もった 野原も畑も家も/ 静寂につつまれていた わたしの夢もやさしさに包まれて/ 静かな時はすぎた
11、(静夜)ベッドのなかで/眠ろうとした時/ 足音のように/ポツリポツリと/ しめやかに雨足(あまあし)が近づいてきた やがてやさしい雨につつまれて/ もう眠りを妨げるものは何もなかった
12、(少女)少女の命は/花のように儚(はかな)くて 少女のくちびるは/私にはもう甘すぎる
13、(花うらない)歓喜の夏が去って/人恋しげな秋が来た コスモス・リンドウ・キキョウ うす紅・紫・青紫 清純な花の香りにつつまれて/おさげの少女は/ きれいな指先で/花うらないをする 花びらを一枚づつ取り去ってゆく残酷さに/ だれも気づかない (そんな風に/さりげない仕草で/ 人を傷つけたことは/ありませんか)
14、(冬)私は冬を愛する 山道は途切れ/ 朽ちた葉を踏みしめる自分の足跡/ 森の冬はさびしい 私は冬を愛する/私はひとりを肯定する
15、(秋の蝶)花らしき花もない/ 寂しい風景のなかでは/神の摂理も働かなかった/ 哀れ/一羽の蝶は/すすきの原を独りさまよう
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