悩みは人生を充実させる/文集「人生の時」

2014年04月24日(木)    5

25、(乙女) 娘たちは白い花の輪を/空へ投げ
  花はちぎれ/雲になって/
  ふわふわと/ふわふわと淡く降りしきった
  彼女らの手は/小きざみに動き/
  ふたたび白い花の輪をつくる
  そうしては空へ投げ/
  彼女らの乙女のそのわけを/知りたいと思った

26、(秋)通り雨の後に/一人とり残された
  濡れた衣服も/かわかないまま/
  黙って立っている
  透明な風が/にわかに駆けぬけ/
  イチョウの葉が/ハラハラと朽ち落ちている

27、(愛の終わり)通り過ぎた季節は/あまりに駆け足なので/
  想い出も/はかない夢のように/過ぎてしまった
  いまは懐かしむ人もなく/追いかける思い出もない

28、いつしか見捨てられた孤島のように/一人としていない/
  夕暮れの浜辺で/漠然と海を見ていた
  暗い心に/うつろな波音を聞いていた
  陽(ひ)はいまにも落ちようとしていた
  最後の赤い情熱が/むなしく揺らいでいた
  今日もまた/望みはかなえられることなく/暮れていった
  敬虔(けいけん)な信仰は/神に伝わらなかった

29、愛することに疲れた日は/野原に出て/
  ささやかで芯の強い/自生の草花に出会って/小さな喜びに浸った
  愛することに疲れた日は/林に入って/あたたかく包み込む/
  慈愛に満ちた木漏れ日のなかで/数少ない慰めを感じた

30、こうしていると/冬のやわらかい日差しが/
  いつまでも/続いてゆくようだ

31、秋の日のさびしさが/しみじみと感じられる日です
  木の葉たちも色を変えて/装う季節です
  私もさっそうとして/きれいな街を歩いてみたい

32、思い出が浮かんでくるが/そこにはもう喜びはなく/
  仄(ほの)かな虚しさが/よぎっている
  そして空気のようなさびしさが/淡々としている

33、夜の幻想/丸い月夜は/
  淡くそして青く画像をとらえて/深い沈黙を守り/
  嘆きの言葉をださなかった

  
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