25、(乙女) 娘たちは白い花の輪を/空へ投げ 花はちぎれ/雲になって/ ふわふわと/ふわふわと淡く降りしきった 彼女らの手は/小きざみに動き/ ふたたび白い花の輪をつくる そうしては空へ投げ/ 彼女らの乙女のそのわけを/知りたいと思った
26、(秋)通り雨の後に/一人とり残された 濡れた衣服も/かわかないまま/ 黙って立っている 透明な風が/にわかに駆けぬけ/ イチョウの葉が/ハラハラと朽ち落ちている
27、(愛の終わり)通り過ぎた季節は/あまりに駆け足なので/ 想い出も/はかない夢のように/過ぎてしまった いまは懐かしむ人もなく/追いかける思い出もない
28、いつしか見捨てられた孤島のように/一人としていない/ 夕暮れの浜辺で/漠然と海を見ていた 暗い心に/うつろな波音を聞いていた 陽(ひ)はいまにも落ちようとしていた 最後の赤い情熱が/むなしく揺らいでいた 今日もまた/望みはかなえられることなく/暮れていった 敬虔(けいけん)な信仰は/神に伝わらなかった
29、愛することに疲れた日は/野原に出て/ ささやかで芯の強い/自生の草花に出会って/小さな喜びに浸った 愛することに疲れた日は/林に入って/あたたかく包み込む/ 慈愛に満ちた木漏れ日のなかで/数少ない慰めを感じた
30、こうしていると/冬のやわらかい日差しが/ いつまでも/続いてゆくようだ
31、秋の日のさびしさが/しみじみと感じられる日です 木の葉たちも色を変えて/装う季節です 私もさっそうとして/きれいな街を歩いてみたい
32、思い出が浮かんでくるが/そこにはもう喜びはなく/ 仄(ほの)かな虚しさが/よぎっている そして空気のようなさびしさが/淡々としている
33、夜の幻想/丸い月夜は/ 淡くそして青く画像をとらえて/深い沈黙を守り/ 嘆きの言葉をださなかった
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