2004年09月03日(金)...虚空に脅かされる
38度の熱に浮かされた感情は次々と迫り来る妄執に対処する気にもなれずに、どんどん下降を続けていた。ふわりふわり、そして確実に何処かへ堕とされてゆく。ベッドから這い出して床に座り直すと、ざわざわと神経が揺らぎ鼓動が頭の芯を貫くのが解った。
小刻みに靡いている何か、微動だにせずこちらを見詰める何か。素早くベッドに潜り込み、もう1度そっと部屋を見渡してみる。机の上から垂れ下がる紙袋の取っ手、パソコン脇の観葉植物。エアコンの風に煽られているカーディガン。床に転がる雑誌と、テディベア。その他、先程酷く恐怖した様なものは何ひとつ無かった。
>ああ、そう、そんな筈は始めから無かった
安堵はゆるゆると全身に行き渡り、からからになった口の中に再び唾液が分泌され始める。掛け布団を引き剥がして、汗ばんだ身体に冷風を浴びせた後は冷たさを失ったミネラルウォータがじんわりと心に広がった。