2009年11月04日(水)...比肩する不義
挙動の度に辺りに漂う其の匂いを探して、手首に辿り着いた。軽く吸い込んだだけで脳味噌を満たす、咽返るようなバニラとココナッツの香りに、思わず眉を顰めた。手の甲に薄っすらと残る痣に、まるでマーキングだと、ひとりごちる。強引な遣り口は、必要を叫ばれている様で、途方も無い安堵が全身を支配していた。今、背中に走る痛みは、保身に塗れた棘よりも遥かに甘美で、与えられた安息は、義務感を滲ませた施しとは類うべくもない。
↓ 一覧 ↑