待ちぼうけ日記。

2014年03月13日(木) あの人がいない間に『ピエタ』。

あの人がいないときは読書。
最近文庫が出たばかりの
『ピエタ』(大島 真寿美 著)を読んだ。
単行本の表紙と同じ
おすまし顔で椅子に座った二人の少女に惹かれて。

あの『四季』で有名な
ヴェネチアの作曲家ヴィヴァルディ。
その死をきっかけに知り合った
生まれも育ちも立場も違う女性たち。
ちょうど私ぐらいかもっと上の年齢の彼女たちが
それぞれの過去を思い出しながら
心を通わせ合って今を生きる・・・。

甘酸っぱい思い出や
今も悔いの残る思い出のほかに
今になって明らかになった
その当時はまったく知らなかった
意外な真実・・・。


その時々は一瞬でも、
人生は繋がっている。
すぐに結論が出たり
一度結果が出たらそれでおしまい
というものじゃない。
だから面倒でもあるけど
味わいもある。
そして思いがけない喜びもある。

そんなふうに
ちょっと気長に思えるようになったのは、
亀の甲より年の功?

辛いこと、悲しいこと、寂しいこと、
嬉しいこと、楽しいこと、・・・
全部まとめて自分の人生なのよね。


物語のラスト。
ピエタ慈善院で育ち
そこでヴィヴァルディから音楽教育を受けていた
今は中高年の女性たちが、
なんとなく中庭に集まって
それぞれの人生を振り返りながら
奏でるヴィヴァルディの音楽。

「ヴィヴァルディは時代遅れ。」
世間でもピエタでもそう思われているにも関わらず、
あちこちから顔を覗かせて
演奏に聞き入るピエタの少女たち。

 むすめたち、よりよく生きよ。

音楽は時代を越える。
元少女たちのエールが今の少女たちに届く。


人生の折り返し地点を過ぎているかもしれない
おばさん(=私)の心にじんわり沁みる
静かで温かな作品だった。


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