あの日、 あの人の事務所があるビルまで行ったけど ドキドキしなかったし とても冷静だった気がする。
冷静・・・ 冷めている。 静か。
ほんとは、 見納めにしようと思って あのビルの前まで行ったのかもしれない。
行って、 しーんとしたビルの前に立って、 あの外観のグレーというかシルバーの壁(窓)を前にして、 ほらね。何も返って来ないよ。 そう自分に言い聞かせようとしたのかもしれない。
私は、昔から 拒絶されそうになるとすぐ察知して 先に拒絶するという癖がある。 傷つきたくないからなのだと思う。
でも、あの人の場合は 無反応だったから こっちから拒絶しようがなかった。
無反応って、 拒絶されるより絶望的だけど、 いつか反応があるかもしれないという希望が うっすらとあったのかもしれない。
というか、 そもそも何に反応するの。 私は何もしていないのだから 反応のしようがないじゃない。 見た目が好みでなければ、 いくら視界に入っていても 脳は反応しないんだよ。 そんなことはわかっている。
だから、 淡々と。坦々と。 たまに何かの偶然で 少し嬉しいことがある。 それだけで満足だった。
でも今は、 偶然の何かを期待するほど 頻繁にあの人には会えなくなっている。
だから終わりたい。忘れたい。 これで最後。 そう思ってビルまで行ったのかもしれない。
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