その1からの続き
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正丸峠の茶屋を出ると、R299の手前までダウンヒル。5年前は峠の滑落により引き返したので、ここからは初めて走る道となる。初めて走る道は新鮮で楽しいものだが、この正丸峠の下りは楽しみより恐ろしさが大きかった。
道幅が狭く、カーブは見通しが悪く、カーブの先から車が上ってくるとヒヤッとする。それなりに車が通るものだから、常に緊張しっぱなし。おまけに路面状態が悪く、木陰で暗くなって視認性も悪くなり、急に現れる溝や濡れた路面に気を遣わなければならなかった。
ようやく峠を下りきると、T字路でR299へは下らずに、刈場坂峠への上り。刈場坂峠自体は2年前の夏休みツーリングの際に奥武蔵グリーンラインを走って通っているのだが、R299から上ったことはない。初めて上る峠道だ。
↑ 刈場坂峠への上りは急坂だ
いきなり10%越えの急坂が現れる。脚の具合がよくないという忍者麺(端から見るととてもそうは思えないほどパワフルな走りなんですけど…)は大事をとって急な区間を押してクリアしたほど。
その後も平均7%〜8%くらいの、そこそこきつい勾配がひたすら続いた。ここでも健脚3人組の勢いは衰えず、S720iの標高表示がどんどん上がっていく。おれは何度も3人から千切れそうになりつつも、気合いでくらいついていった。
↑ あっという間に高度が上がり景色がよくなる
そんなペースで上っていくものだから、時折現れる開けた場所などから見える景色はどんどんよくなっていった。眼下には、先ほどまで走っていた道が小さく見える。
↑ 刈場坂峠からの素晴らしい眺め
一人ならけっこう長く感じたはずの上りも、4人で走っているとあっという間に感じた。刈場坂峠に到着すると、その眺めに皆感動した。よく晴れた空、そして澄んだ空気のために遙か彼方まで見渡せる。
2年前の夏にここにやってきたときは、晴れてはいたのだけど、夏特有の靄ががかかって遠くまでは見えなかった。夏に訪れた眺めのいい場所も、季節を変えて訪れてみると別の顔を知る事ができて興味深い。
↑ 刈場坂峠の「りんどう茶屋」
峠には茶屋があり、ここで味噌おでんを2人で1つずついただいた。ご老人が3人ほどで運営していて、小銭を扱うレジは、カップ焼きそばの空き容器というのがほのぼのしていてよかった。
↑ 茶屋で食べた味噌おでんがおいしかった
味噌おでんは4切れで300円。とてもおいしかった。おでんを渡してくれたおばさんは、どの方角に何山があるか説明してくれた。榛名山や赤城山、妙義山なども教えてくれて、それらの山を2年前に走ったおれとしては、興味深かった。ここまで来ると、群馬県もすぐそこ、という感じだろうか。
茶屋を出発しようというときにH高さんのグローブが片方ないことに気付き、茶屋のおじいさんも含めて皆で探したけど結局見つからなかった。仕方なくH高さんはグローブ片方のままの出発となった。
しばらく走っていると、道ばたでパンク修理をしているローディを見かけた。軽く会釈してスルーした後、走り屋さんがいないことに気付いた。先ほどのローディの手伝いをするために止まったのだろうか。
引き返してみると、やはり先ほどのローディのところにいた。後で聞いたところによると、後ろからやってきたバイクが、H高さんのグローブを届けてくれたのだと言う。うちらが出発した後に茶屋で発見され、こっちの方角に走るライターの人に、うちらにグローブを渡してくれるよう頼んだのだ。
グローブを受け取った後に、このライダーが目に入ったのだろう。彼はパンクしてチューブ交換したのだが、タイヤのビートが入らず困っていた。チューブ交換が初めてなのだという。走り屋さんがはめてあげると、後は自分でできるということで、うちらは出発した。
↑ 奥武蔵グリーンラインを走って行く
奥武蔵グリーンラインは、自然の中を走り、車も少なくいい道だ。しかし、どこか寂しさも感じる。2年前に「荷物なしでグループで走ったら楽しいだろうなぁ」と思ったのだが、それが今実現している。皆で走ると最高に楽しい道だ。
↑ 景色がいいところがいくつもあった
刈場坂峠まで一気に上がった後は、尾根沿いにほどよいアップダウンを繰り返しながら少しずつ高度を下げていく。ところどころに眺めのいい場所があり、山々に囲まれた景色を楽しむ事ができた。
↑ 茶屋があるたびに蕎麦を食べる!
気持ちよく坂を下り、たまに現れる短い上りは下りの勢いを活かしてダンシングで一気に上りきり、快調に進んでいった。そして、茶屋を見つけると立ち寄って、山々の景色を眺めながら蕎麦を食べ、談笑。とても有意義な時間だ。
↑ 少しずつ標高が下がってきた
少しずつ標高が下がってきて、見える景色も変化してくる。おれが先頭で下っていて、下りの途中で景色の開けたところを発見してストップをかけたときは皆文句を言いたげな表情だったけど、実際に眺めを楽しんだ後は満足した様子だった。
↑ この茶屋はもう閉店の時間だった
しばらく下った後にやってきた茶屋は早めに閉店したようで、ラストオーダーの後だった。忍者麺は食べる気まんまんのようだったけど、さっき蕎麦を食べたばかりなので、他の3人は閉まっていてちょっとホッとしたような…。
↑ 眺めがいいのでしばしまったり
この茶屋は近くに眺めのいい斜面やベンチがあったので、各自写真を撮ったりしてまったり。最近走り屋さんの腕が上がっていて、けっこう真剣に写真を撮っている様子なので「D80買うしかないですよ」と冗談っぽく言ったら、まんざらでもないようだった。
↑ 2年前の夏休みツーリング以来の顔振峠
それからまたしばらく下ると、顔振峠にやってきた。さすがにもう茶屋で休憩まではしなかったけど、写真タイム等でしばしまったり。初めて来た走り屋さんや忍者麺は新鮮だし、以前来た事のあるおれやH高さんは懐かしさに浸る。
↑ 遠くに富士山まで見えた
顔振峠の駐車場からの眺めも素晴らしく、この日は空気が澄んでいて遠くに富士山まで見る事ができた。本当に、これ以上ないくらいのいい天気だった。しばらくまったりした後、顔振峠を後にした。
2年前に奥武蔵グリーンラインを走ったときは、顔振峠の先の分かれ道でR299側へ下って行った。今回はR299へは下らず、鎌北湖の方角を目指す。ここからはおれも初めて走る道だ。
↑ どんどん下って見える景色も変化してきた
それまで下り基調だったけど、ここからは上りも多くなってきた。すでに100km以上峠を含んで走って脚に疲れが溜まってきているので、大した勾配でなくてもきつい。それでも、上りより下りの方が多い。標高が下がってきた。
↑ 対向車に気を付けながら下って行く
途中からはいちいち地図を開かずに直感で道を選んで進んでいった。道幅が狭く、車もちょくちょく通るのでカーブは特に慎重に曲がっていった。そして、しばらく下ると湖が見えてきた。鎌北湖だ。
↑ 11年ぶりの鎌北湖 奥に見える白い建物は鎌北レイクビューYH
鎌北湖はかなりマイナーな湖だけど、おれには思い出がある。中学3年の夏休み、4人でMTBで神奈川〜埼玉〜栃木〜茨城〜東京〜神奈川と泊まりがけツーリングをした際、初日に泊まったのが、ここにある鎌北レイクビューYHだ。もう11年前の話になる。まさかまたここにやってくるとは。
ここで、この後のルートについてH高さんと相談。このまま下って県道30号で飯能まで南下し、八橋線沿いの県道で瑞穂を目指して、瑞穂からR16で南下することにした。
↑ 西日を背に飯能を目指す
すでに16時半を過ぎ、西日を背に飯能を目指した。県道30号は道幅が広くない割には交通量が多く走りづらかったが、グループで走れば辛さも半減。たまに見かけるコンビニはなぜか反対車線。辺りが薄暗くなってきたときに、ようやくコンビニにたどり着いた。
↑ 最初の青梅駅以来のコンビニで休憩
コンビニはオアシスだ。ここで帰りに向けての補給を済ませると、全員前後のライトを点けてナイトラン装備で出発。まずは飯能駅を目指す。何度来ても、飯能駅周辺はゴチャゴチャしていてよくわからない。
飯能駅前は3度目。1回目は5年前の正丸200kmラン、2回目は2年前の夏休みツーリング、そして今が3回目。今回はR299ではなく、駅前まで行って、脇道から踏切を渡って線路をの反対側へ。
駅前の道を直進して、初めて走る真っ暗な道を進んでいく。地図でだいたいのルートを頭に入れて、後は標識などを頼りに進んでいった。途中で道を間違えそうになったけど、すぐに気付いて予定の道へ復帰した。
前日に引き続き、この日も月が大きかった。前日は忍者麺もきれいな空、雲、そして大きな月を見ていたというので、昼間などはその話題で盛り上がったが、夜に改めて大きな月を目にして、皆走りながら驚きの声を上げた。
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瑞穂からはR16を南下。メンバーの中で唯一地図を持って、見知らぬ夜の道をしばらく先頭を引っ張ってきたので、かなり疲れてきていた。それを察知して2番手を走っていたH高さんが先頭を代わってくれた。
幸いなことに、R16に乗ってからは追い風となり、平坦路ということもあり楽にハイスピードを保ちながら移動することができた。そしてあっという間に多摩川に架かる拝島橋までやってきて、しばし談笑した後、H高さんとはここでお別れとなった。
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拝島橋からは、まずは八王子を目指す。今度は忍者麺が先頭を走るというので「ペース抑えてくれないと付いて行けないよ」と念を押したところ、「脚が痛いからスピード出ないよ」と言っていたので安心。
ところが、走り出すと忍者麺のペースが速い。上りでも全然緩くならない。いきなり千切れてしまった。おれはもう脚が疲労しきっていて、ペースを上げられない状態だ。
少し先のサンクスで休憩してくれるよう頼み、急遽ピットイン。もう走り慣れた道になってきているし、青梅や飯能とかに比べたらだいぶ家に近いが、残りの30kmちょいが長く感じる。
サンクスからは、おれが先頭で走って行った。おれが先頭じゃないと、千切れてしまうからだ。忍者麺と走り屋さんには物足りないペースだったかもしれないけど、おれのヘロヘロペースに付き合ってもらった。
元々平日も仕事で睡眠不足だったのに、その延長で前日も2時間睡眠と、睡眠時間がまったく足りていない状態でこの日のハードなコースを150kmほど走った状態では、疲労と眠気が限界に近かった。
峠としては大したことない御殿峠がものすごく長く感じ、橋本付近では走りながら何度か意識が飛びそうになった。橋本の五差路でR129で帰る忍者麺と別れ、相模原で走り屋さんと別れ、一人になってからはまた意識を取り戻した。
残りのR16は最後の力を振り絞って出せるだけの力でガンガン走って行き、21時前に無事帰宅。疲労困憊で意識も朦朧としていたが、充実感でいっぱいだった。1日中、好きなことを楽しめたのだ。
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今回のランは、直前に即興で考えたコースだった割には、まるで1ヶ月前から綿密に考えたコースのように楽しめるコースだった。素晴らしい天候に恵まれて景色は最高だったし、キツイ峠の上りもその景色の良さでずいぶんと楽に感じた。
そして何より、同じ自転車仲間と一緒に走ったことが、今回のランを数十倍にも楽しくさせてくれた。苦楽を共にする仲間達とのランは、素晴らしい思い出となる。
今回はかなりハードなコースだったけど、もっと気軽なランでもいいので、グループで走る機会を増やしていきたいなぁと思う。次は、年内にロードを買う予定の団長も一緒に。
走行日:2006/10/08
出発:6:31 帰宅:20:56
走行距離:180.9km
走行時間:8h 41m 34s
平均速度:21.0km/h
最高速度:51.3km/h
上昇距離:2215m
温度(最低/平均/最高):17℃/20℃/33℃
積算距離:15292km(ロード)