2024年12月29日(日) |
ゼロハチゼロナナ / 辻村 深月 |
地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。
−同じ年の子のお母さんになろうよ。 一緒に子供遊ばせて、学校の役員とかも、一緒にやろうよ。一緒に海行ったり、遊園地行ったりしよう。
チエ、どうして? 私は思う。 どうして、お母さんを殺したの。何故それは私の家ではなく、あなたの家だったのだ。娘に殺されて死んだのは、何故、私の母ではなく、あなたの母なのだ。
ゼロハチゼロナナは 0807,チエの母のキャッシュカードの暗証番号。 8月7日、チエの誕生日。
2024年12月23日(月) |
自己家畜化する日本人 / 池田 清彦 |
現代社会のシステムや権力に対して攻撃性を抑えて従順になり、思考を放棄する日本人。 自己家畜化をキーワードに、生物学や人類学、心理学の知見を駆使して世界でも例を見ない速度で凋落する日本人の精神状態を明らかにする。
日本人の精神的な自己家畜化がこのまま進んでいけば、日本の凋落は止まらないし、どこぞの属国になる未来も十分にありうる。なによりも、個々人がそれぞれに幸福を追求できない人生を送るのは不幸だ。
政治に無関心な国民が増えていくことは、権力者にとって都合がいいことしかない。今のように自公政権が長く続いている状態は、国民が自分たちで自分たちの首をゆっくりと締めているようなものだ。
2024年12月19日(木) |
風と共にゆとりぬ / 朝井 リョウ |
小説に込めがちなメッセージや教訓を「込めず、つくらず、もちこませず」をモットーに綴ったエピソード
日本経済新聞で2015年下半期の半年間連載というフィールドオブドリームスに錯乱した著者が、新聞購買者を読者にしたいという野心に司られつつ綴ったコラム
切れ痔ほどメジャーな響きもない、イボ痔ほど笑いに変えられない− お尻の穴が増えちゃう病気、こと、痔瘻。 発症、手術、入院、そのすべてを綴った肛門界激震の一大叙情詩。
面白い人
2024年12月15日(日) |
ははがうまれる / 宮地 尚子 |
頼りない自分が、母親になり、子どもを育てていく。とまどいだらけの日々が続くが、それでもなんとかなっていく。子どもは物理的に大きくなり、精神的にも成長していく。 「はは」になった人間もまた、精神的に少しずつだが成長していく。 人間が、新しい人間に出会い、影響を与え合い、変容していく。そんな風景が「ははがうまれる」という言葉の奥行きに、広がっていくとうれしい。
二〇一〇年から二〇一五年にかけて、月刊誌『母の友』に掲載されたエッセイを、まとめたもの。
著者は大学院教授、精神科医師、医学博士。
2024年12月10日(火) |
護られなかった者たちへ / 中山 七里 |
東日本大震災から9年が経った宮城県の都市部で、被害者の全身を縛った状態で放置して餓死させるむごたらしい連続殺人事件が起こる。 容疑者として捜査線上に浮かんだのは、知人を助けるために放火と傷害事件を起こし、刑期を終えて出所したばかりの利根。 被害者二人からある共通項を見つけ出した宮城県警の刑事・笘篠は、それをもとに利根を追い詰めていく。やがて、被害者たちが餓死させられることになった驚くべき事件の真相が明らかになる。
生活保護の申請を却下されて餓死した愛する者たち
2024年12月04日(水) |
善医の罪 / 久坂部 羊 |
内容紹介 意識不明の重体だった男性を、主治医の白石は、家族の同意のもと尊厳死に導いた。3年後、カルテと看護記録の食い違いが告発され、医療業界を揺るがす大問題へと発展。検察は彼女を殺人罪で起訴し…。現役医師による医療小説。
第二章 の 主人公白石ルネを陥れようとする麻酔科医の登場で以前 読んだ物語だと気が付いた。
前回は単行本で、今回は文庫本で。
「世間が尊厳死や安楽死に目を向けないのは、死を肯定する議論に関わりたくないからだ。命の尊さとか、生きることの大切さを言い募る連中に顔を向けているほうが、楽だからな。でも、そういう人が多いかぎり、状況は改善されない。自分に死が迫ってから、尊厳死や安楽死を望んでも遅いのに。そうだろ」
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