前の月食は、ｱﾀｼの誕生日だった。
けれど、条件が良くなく、日本では殆ど観測されなかった。
ｱﾀｼの住んでいる東京では愛でることは叶わなかった。
昨日、日付が変わる頃。
おさるが何度も家を出たり入ったりして。
水人、今が一番綺麗だぞ！！！！！ って。
ｱﾊﾟｰﾄの玄関をいっぽ出たその上に。
言葉では言い尽くせない、赤い月。
少しその意味は理解していないのだけれど、月食には赤くなる月と蒼くなる月があるらしい。
で、今回は赤い月。
夜は本当に冷えていて。
靴下二重、ﾍﾞｽﾄ、ﾊﾟｰｶｰ、ﾀﾞｳﾝを着込んでもなお寒く。
ﾃﾞｼﾞｶﾒを持つ手が震えてしまったので、今回はおさるに撮って貰った一枚。
何が悲しくて、ﾊﾊｦﾔとこんな素敵なｼｮｰを見なくてはならないの？
心の中でそう想う。
おさるも大学がとても楽しいらしく、いつもいつも大学生活の話ばかりしてくれる。
もしかして誘いたかった女の子もいるかもしれないのに。
『水人の生きている間はきっと。
もうこんな綺麗な皆既月食は見えないよ』
なんて。
そんなことを言いながら、けれど、一緒に見てくれる優しさが嬉しい。
ひといき月を鑑賞した後、『何だか甘いもの食べたいねー』ってｺﾄになって。
ｱﾀｼは家で水仙烏龍茶を入れて、おさるはすぐ近くにあるｺﾝﾋﾞﾆでｽｨｰﾂを買いに行き、熱々の烏龍茶と苺のﾛｰﾙｹｰｷを頬張る、優しい夜。
うん。
ありがとうね。
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