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ファンデンブルグ研究室 April,8 2045 プロイセン国 ファンデンブルグ研究室 『オンライン・カジノに詳しいファンデンブルグ助教授に紹介状を書いておくので、3日後に訪ねてみなさい。 その時に、このレポートを記入して持っていくように』 講義が終わるとローゼンバーグは、アンジェラとブラッドにそう伝えた。 3日後 「おはよう、アンジェラ。さあ行こうか」 身長が190�儷瓩�あるブラッドが子供のようにはしゃいでいる。 午前中はいつもテンションの低いアンジェラだが、 ブラッドといると不思議と元気が出てくる。 「おはよう、ブラッド」 『ファンデンブルグ研究室』のドアをノックすると、 「どうぞ」 と、若い女性の声が部屋の奥から聞こえた。 扉に手を触れようとすると左右に自動で開き、部屋から勢いよく飛び出す薫りに包まれた。 見渡すと、ドアから奥の部屋まである3本の柱には絵画が飾られ、通路の両脇にはガラス張りの部屋が2つずつある。 おそらく、研究生用の部屋なのだろう。 そのすっきりとした空間は、どの場所にいても全体が見渡せる設計になっており、とても開放的だ。 「ようこそ」 奥の部屋から出てきた研究生風の白衣姿の女性が、2人に声をかけてきた。 2人は奥へと歩き、彼女の前で立ち止まり会釈をした。 「こんにちは。アンジェラ・クルツリンガーと申します」 「俺はブラッド・エアハルト。よろしく、カワイ子ちゃん・・・うぐっ」 ブラッドの腹部に肘を入れたアンジェラが申し分けなさそうに彼女に言った。 「ローゼンバーグ教授のゼミの者です。ファンデンブルグ助教授にご相談に参りました」 ブラッドはふらふらっと、前かがみになりながらも、 「助教授は居る?」 と、笑顔で女性に尋ねた。 彼女は、透き通るような白に近い銀色の髪をなびかせ、白衣のポケットに両手を入れたまま、 「あら、私が、その助教授よ」 と、にっこりと微笑みかけた。 「え?」 「ええ〜〜〜?」 あまりの若さに驚く2人を余所に、目の前の助教授は、 「ヴァレンティーネ・ファンデンブルグよ。よろしくね」 と小悪魔的な笑顔で、右手を差し出してきた。 入り口から2番目の右側の部屋に案内された2人は、 課題のレポートを助教授に手渡した。 レポートを受け取ったファンデンブルグ助教授は、奥の椅子に座り、それぞれのレポートに目を通しながら語りかけた。 「それでは、ミス・アンジェラ。貴女はまず、そこのキッチンでコーヒーを3つ入れて頂戴。カップは棚のを使ってね」 「は、はい」 突然の初仕事に、アンジェラはきょとんとしながらも、 「ファンデンブルグ助教授、お砂糖とミルクはいかがなさいますか?」 と、冷静さを取り戻し立ち振舞った。 「ブラックでいいわ。それと、アンジェラ、私を呼ぶ時はヴァレンでいいわ」 「それから、ブラッド君。君は私の後ろに回って、肩を揉みなさい」 「は、はい」 大きな体のブラッドが小走りにヴァレンの後ろに回り、腕まくりをする。 「そ、それでは早速・・・」 ブラッドが両手を伸ばした瞬間、 「君は、私をヴァレンティーネ様と御呼びなさい」 冗談とも本気とも受け取れる声で、背中越しにブラッドに伝えた。 アンジェラは可笑しくて、コーヒーの蓋を回す手に力が入らない。 その様子を歯がゆく感じながら、ブラッドは 「そ、それでは参ります、ヴァレンティーネ様」 と、ヴァレンの両肩に指を置き、親指に力を込めた。 「あん、いいわ。流石、体育会系の男ね。あん、そこね」 「15,16,17,18・・・は、光栄です。ヴァレンティーネ様・・・22,23,24,25・・・」 褒められて気を良くしたブラッドは益々張り切って、数えながら手首から先だけを動かしている。 レポートに目を通し終えたヴァレンは、テーブルに2枚の紙を置き、 そのまま瞼を閉じ、華奢な肩越しに加わった指先の力に神経を委ねた。 「98,99,100,101・・・・」 「コーヒーをこちらに置いておきます」 テーブルにマグカップをそっと置くと、アンジェラは椅子を引き座った。 「ありがとう、アンジェラ。じゃあレッスンを始めましょう。 ブラッド、あそこの棚の2番目の引き出しからカードを4組取ってきて。 それと、棚の上にある砂時計も一緒にね」 ブラッドは名残惜しそうに指を離すと、ヴァレンの左手が指す方へかけ出し、 棚の前で振り返り、ヴァレンが頷くのを見てから引き出しを開いた。 LESSON.1 4組のカードのうち、1組の箱を開くと、ヴァレンは手早くハート・ダイヤ・スペードの1-9だけを左手に持ち、 残ったカードを箱に戻した。 「この27枚をシャッフルして9枚ずつ三人で分け、同一種類の1から9を揃えて行くゲームをしましょう。 要らないカードを右の人の目の前に同時に置くの。 それを誰かが揃うまで繰り返して、1つの種類で1-9を揃えれば勝ち。いい?」 「はい」 「え〜と、要するに配られた9枚で一番多い種類を集めればいいわけですね?ヴァレンティーネ様」 「ええ。おそらく、1ゲーム10秒もあれば終わるわ。 だから、私はダイヤ。アンジェラはハート。ブラッドはスペードで揃えることにしましょう。 30秒単位の砂時計を使うから、30秒で勝負がつかなければ、引き分けとして次のゲームね」 「はい」 「はい」 「じゃあ、ブラッド君。シャッフル」 1ゲーム目 引き分け。 2ゲーム目 ヴァレン。 3ゲーム目 引き分け。 4ゲーム目 ヴァレン。 5ゲーム目 ヴァレン。 6ゲーム目 引き分け。 7ゲーム目 ヴァレン。 8ゲーム目 ヴァレン。 9ゲーム目 引き分け。 10ゲーム目 引き分け。 11ゲーム目 引き分け。 12ゲーム目 アンジェラ。 「はい、ここで一旦ストップ」 「え〜 1度も勝てないや。あと1枚でいつも引き分けだ〜 ついてない」 ぼやくブラッドに微笑みながら、ヴァレンは、 「アンジェラはコツが解ったようね」 「はい」 「ええ?? コツなんてあるんですか? 運だけじゃなくて?」 「そうよ、だってブラッドの手元を見てると、中盤までは持っているカードの中から取って右に渡しているんだけど、 そのうち、きたカードをちらっと見ただけで、すぐに右へ渡してたでしょ?」 「う、うん。あと1枚で揃う時は、要らないカードがすぐにわかるからね」 「そうね。だから自分が無理そうな時は、ブラッドを見てると引き分けに持ち込めるのよ。 だって、スペードを1枚アタシが持っていれば、ブラッドはいつまでも揃わないでしょ?」 「げげっ ずるいな〜それ。そういうことだったのか」 カードをテーブルに叩きつけて悔しがるブラッド。 「運を競うゲームじゃないのよ。ブラッド。これは闘いよ」 手前に引き寄せながらテーブルの上でトントンとカードを揃えるアンジェラ。 その横で、ヴァレンは4組全てのカードの箱を開きながら言った。 「ここからがLESSON1よ。」 ローゼンバーグ研究室
プラチナブルー第1章 Angela,Brad and Valentina編
April,5 2045 プロイセン国 ローゼンバーグ研究室『ブラッド君。君は東洋のジパングという国を知っているかね?』 「ええ、ローゼンバーグ教授。名前くらいは・・・でも 詳しくは知りません」 『ふむ、そうか、誰か彼に説明できる者はいるかね?』 「はい、教授」 静寂の研究室に響き渡るような澄みきった声。 部屋にいる5人が、ブラッドの右隣の席で立ち上がったアンジェラ・クルツリンガーに注目した。 『ん、アンジェラ君。それでは頼む』 「はい」 肩にかかるほどの髪を赤いリボンで束ねたアンジェラは、 ローゼンバーグに軽い会釈をしてから部屋にいる他の5人に視線を流した。 「50年前、世界2位の経済力を誇ったジバングは、このプロイセン国同様、 人口構成の高齢化によって、国力が緩やかに失速し始めたと聞いています。 現在の人口は約8,000万人。平均寿命は世界一の123.8歳、 うち60歳以上の人口が50%を超える唯一の国。 労働人口が極めて少ないために、15年前には総GDPに占める製造業・流通業・サービス業の比率を インターネット上での経済活動が上回ってしまったという経済構造。 外国への提供資本が世界3位でありながら、国の抱える債務はワースト1位。 なんでも国営のオンライン・カジノの手数料と税収が歳入の30%を占めているとか・・・」 『うむ、アンジェラ君。上出来だ』 ローゼンバーグはアンジェラに優しく微笑むと座を立ち、後方のパネルのスイッチを押した。 皆が囲むテーブルの中央に立体映像が現れた。 『現在、オンライン・カジノは、プレイヤーを供給する組織、 プレイヤーにベット(賭け金)する不特定多数の法人、個人。 そして運営する国家。 この3者の関係で成り立っているのは知っているな?』 教授がフォログラムの中にある、立体のグラフを指示棒で指しながら 皆に尋ねた。 皆が、無言のまま頷いたのを見て、ローゼンバーグは続けた。 『大多数の国では、このプレイヤーは民間組織から派遣されたり、選出されたりするのじゃが、 このジパングでは、国家が選んだ者しかプレイヤーとしての仕事が与えられないのだ』 「つまり、プレイヤーは国家公務員ってことですか?」 アンジェラが緑色の瞳をいぶかしげに輝かせながら、ローゼンバーグに尋ねた。 『うむ、その通り。じゃが、ジパング出身でワシの無二の友人、タツミの話によれば、 規模拡大のために国家は、参加資格の規制緩和を前にして流入してくる海外の組織的なプレイヤー達に 太刀打ちできないのでは?と考えているようなのじゃ』 ローゼンバーグは机上のミネラルウォーターの入ったグラスを手に取り、口をつけた。 「教授・・・難しすぎてよくわかりません」 ブラッド・エアハルトは悪びれることもなく、苦笑いでローゼンバーグに率直に意見した。 『あはは、そうじゃな。単刀直入に言おう』 ローゼンバーグは再び振り返り、パネルのスイッチをオフにし、部屋の明かりを灯した。 『君達をジパング国へ送り、プレイヤーとして参加してもらう事が私の喫緊の務めなのだ』 再び静寂に戻る研究室。 「やった。オレ、外国に行くのは初めてなんだよな〜〜」 唖然とする3人の学生を他所に、ブラッドは遠足に行く前日の子供のように飛び跳ねた。 その横で、アンジェラはローゼンバーグを見つめていた。 【第一章の登場人物】 アンジェラ・クルツリンガー Angela Kurz Ringer 20歳。 地元の4年制小学校を卒業後、9年制のギムナジウムへ進学。 卒業後、1度目で国家試験のアビトゥーアに合格。 精神科医である父親の影響を受け、家から一番近くにあるローゼンバーグ総合大学医学部へ進学。 身長162cm 体重52�圈_搬押”磧∋舒貎諭� ブラッド・エアハルト Brad Erhart 20歳。 州都にある12年一貫教育シュタイナー学校卒業後、2回目で国家試験のアビトゥーアに合格。 プロイセンでは、アビトゥーアの資格を持てば、自分の望む総合大学を選択することができる。 プロサッカー選手を夢見るも、致命的な怪我で現役を諦める。 その後、整形外科医となることを選択し、ローゼンバーグの門をたたく。 身長188cm 体重85�圈_搬押∧譟�兄弟無し。 ヴァレンティーネ・ファンデンブルグ Valentina Fandemblg 24歳。 ローゼンバーグ教授に、学部在籍中に助教授推薦を受け、 卒業論文が、学会に新風を起こし、時の人となる。 身長158cm 体重50�圈_搬押〔気� トッティ・ファンデンブルグ Totti Fandemblg 25歳。 シチリア生まれだか、両親の記憶はなく、物心ついたときからファンデンブルグ教会で育つ。 16歳の時に、北欧の飲食店経営のオーナー夫妻の養子となり、料理の腕を磨く。 22歳の時に、夫妻が亡くなると、プロイセンに北欧風飲食店を出店。その後タツミグループ入りを果たす。 身長175�僉‖僚�62�圈_搬押〔気� フリッツ・フォン・ローゼンバーグ Fritz Von Rothenberg 54歳 父の遺志を継ぎローゼンバーグ総合大学の教授職とフォンデンブルグ教会の司祭職を兼任。 大学では、ブラッドとアンジェラの医学部の師。 教会では、ヴァレンとトッティの父親がわりでもある。 タツミコーポレーション社長の辰巳大樹と親交があり、ジパングでのオンライン研究に協力している。 デニス・T・ヴォルフガング・Dennis Tatsumi Wolfgang 30歳 表向きはICPOの刑事であるが、実態はタツミコーポレーション会長辰己直樹の秘書。 辰巳圭樹は曾祖父 リカと円香の再従兄妹(はとこ)にあたる。 身長185cm. 体重77�圈‘反� その他の登場人物 チェン教授 ローゼンバーグ総合大学の物理学部教授 34歳 ジパング行きを賭けて行われる予選のヴァレン達の対戦相手に名乗りを上げる。 ヤン教授 プロイセン国オンラインカジノ研究の第一人者であり、今回の派遣委員会議長 65歳 シルバー 19歳 ローゼンバーグ教会出身の若者 トッティの弟分 マリー 18歳 ローゼンバーグ教会出身の少女 トッティの妹分 椎名円香 25歳 ジパングから招へいされた麻雀の先生。 トッティのボス。タツミコーポレーション社長辰巳大樹の長女。 |