プラチナブルー ///目次|前話| 続話

トッティの店
April,8 2045

17:00 ファンデンブルグ研究室

「さあ、5時になったから休憩にしましょう」
「もう、そんな時間なんだ」
「ふ〜、腹減った〜」

ヴァレンの掛け声で、静まり返っていた部屋に活気が戻った。

「どう? 2人とも、読めたかしら」
「ええ、ヴァレン、一通りは読めたから、大体のルールはわかったわ」
「はい、僕もこの本に書いてあることは理解できました」

「素晴らしいわ、2人共。続きは夕食の後ね」
「はい」
「夜は、ビアレストランでいい?」
「やった〜やっとビールが飲める」


17:30 トッティの店

研究室のある棟の東側に面した大通りが、学生向けのレストラン街になっている。
その大通りから、さらに東側に2ブロック、約5分ほど歩いた通りに、
パブやバーがテナントに入るビルが所狭しと並んでいる。

「このビルの5階よ」

ヴァレンに案内された店は、北欧風のビアレストランだった。
カウンターには客は座っていなかったが、テーブル席には5組ほどの先客が賑やかに談笑している。

「あら、ヴァレン。若い子と一緒だなんて珍しいわね」

カウンターに立っているウェイター風の男がヴァレンに声を掛けた。

「ハイ、トッティ。久しぶり。アンジェラとブラッドよ」
「よろしく、御二人さん、トッティよ」

色白の男は、決して男らしいとはいえない言葉遣いで、アンジェラとブラッドに挨拶をした。
ヴァレンを座らせるために、ブラッドがカウンターの椅子を引いた。
その左側にアンジェラが座ると、ブラッドはヴァレンの右側に座った。

「メニューをどうぞ」

3人の前に広げられたメニュー。

「俺、黒ビールとソーセージ」
「アンジェラもビールでいい?」
「はい」
「じゃあ、それを3つずつね」

トッティと呼ばれた男が、ビアジョッキを用意している間に、
ヴァレンが、メニューから何品かをチョイスし、左右に座っている2人に同意を求めながらオーダーをする。
まもなく、3人にジョッキが渡ると、ジョッキをぶつけ合う音がファンファーレとなり晩餐が始まった。

次々にカウンターに並べられる料理。その料理のボリュームもだが、
皿の空いていくスピード、空ジョッキの数もハイペースだ。

「あらあら、若い男の子がいると、カウンターも随分と忙しくなるわね」
「本当ね。アタシ一人だと、トッティはしゃべってるだけだものね」
「まったくだわ」

ヴァレンとトッティの会話を聞きながらも、一心不乱に飲み食べ続けるブラッド。
その横で、アンジェラもマイペースで好きな料理にフォークを刺している。

「一体、どういう集まりなの?3人は」
「そうね〜戦う同志の決起集会ってところかしら」
「あは、何の闘いなの?」

トッティが興味深そうにヴァレンに尋ねる。

「麻雀よ。知ってる?」
「あらまあ、あの東洋の奇妙な遊びね。なんでまた」
「ほら、中国系のチェンを知ってるでしょ?」
「ええ、あの漢方薬みたいな香水をつけている女ね」
「あは、今度対抗戦があってね、負けられない勝負があるの」
「へ〜ヴァレンも面白いことに首を突っ込んだものね」
「全く面倒な・・・というより迷惑な話だわ」
「ということは、この子達が戦士なのね」
「ええ、アタシのナイトとエンジェルよ」
「まあ、素敵」

トッティの興味は、ヴァレンの話から、ナイトと呼ばれたブラッドに移ったらしい。
ブラッドがジョッキを置くたびに、微笑ましそうにブラッドの手を握る。

「あなた、おいしそうに飲むわね〜」
「は、はあ」

手を重ねられるたびに引っ込めるブラッド。
それを何度か繰り返した頃に、

「あら、やだ、貴方達の敵が登場したわ」

トッティが入り口を見ながら、呟いた。
ヴァレン達が振り返ると、東洋系の5人組が入って来るところだった。

「うわ、最悪だわ。よりによってこんな所で会うなんて・・・」

ヴァレンの様子から、今、入ってきた客達が、次の予選の相手らしいことをブラッドは理解した。

「奴らは強いんですか? ヴァレンティーネ様」
「う〜ん、実力は知らないけど、何せ中国3000年の歴史でしょ」
「でもヤツラ、どう見ても生まれて数十年の人間ですよ」
「きゃはは、いいことを言うわねブラッド」
「本当、楽天的よね、ブラッドったら」

「あはは、でもヴァレンティーネ様。今日読んだ本の巻末に書いてあった・・・」
「うん?」
「みんなが驚く裏技集ってやつですか? アレ使えば楽勝じゃないですか」
「ツバメ返しのことね」

「早く、やってみたいな〜麻雀」
「ほんとね〜」

ブラッドとアンジェラが話をしている様子を交互に見ながら、
ヴァレンは、それぞれ2人に耳打ちをした。

「予選に勝つことが出来れば、ご褒美を用意しておくわ」
「じゃあ、僕はヴァレンティーネ様が欲しい」
「あ、アタシもヴァレンが欲しいわ」
「アタシは2人のニンジンですか?」

再び、3人はジョッキをぶつけ合った。

才能の雫
April,8 2045

14:00 ファンデンブルグ研究室

ブラッドとアンジェラが午後の講義の為、研究室に戻ると、PCの前に座っているヴァレンの背があった。
調べ物をしているのか、時々髪をかきあげては画面を食い入るように見つめている。

「ヴァレンティーネ様、戻りました」

ヴァレンはブラッドに声を掛けられるまで気がつかないほど、何かに没頭していたようだ。

「ああ、それじゃあ、2人とも席について頂戴。アンジェラ。コーヒーを入れてくれる?」
「は、はい」

食堂で紅潮していた顔が元に戻っていたアンジェラは、再び顔を紅くした。

(変なやつだな、耳まで真っ赤だぞ。)

ブラッドはアンジェラの後姿をいぶかしそうに見つめている。

「時間が少ないから、取り急ぎで、説明するわね」

コーヒーを3つテーブルに並べたアンジェラが席に着くと、ヴァレンが分厚い本を2冊用意して話し始めた。


「ジパング行きの件だけど、24日の月曜日に予選が行われることになったの」
「予選?・・・選考みたいなもんですか」
「まあ、そんなところね。他にも希望者が出てきたの」

きょとんとしているブラッドにヴァレンは視線を移すこともなく話し続けた。

「貴方たちには、必ず勝ってほしいの」

ヴァレンは強い意志を声に込めて、2人に本を手渡した。

「それは、麻雀というゲームのルールブック。今回はそのゲームで勝敗を決めるの」
「へ〜麻雀か。」

茶色のカバーを開き、パラパラと捲りながら、ブラッドはアンジェラに声を掛けた。

「アンジェラは麻雀っていうゲームを知っているのか?」
「う〜ん。名前くらいは知っているけど、プレイしたことはないわ」
「イメージ的には、セブンブリッジのようなものよ」

カードゲームで例え話をしたヴァレンにアンジェラは頷きながら、本を開いた。

「アンジェラはハイスクール時代にカードゲームで優勝してるわね」
「あ、はい・・・たまたまついてただけなんですけど」
「ううん、そういうツキも大切よ。心強いわ」

アンジェラは表情から緊張感を解放させて微笑んだ。

「ブラッド・・・貴方の経歴は・・・スポーツのことばかりね」

ブラッドの経歴をまとめたレポートを片手にヴァレンは苦笑いした。

「あ、でもヴァレン・・・」
「ん? アンジェラ、どうしたの?」

「ブラッドはこう見えても、記憶力が物凄いの、たぶんこの本なら3時間もあれば・・・」
「本当?」

「アンジェラ、こう見えてもは失礼だろ。それに・・・」
「それに?」

ヴァレンが、本を相変わらずパラパラと捲っているブラッドにようやく視線を移した。

「ヴァレンティーネ様。僕なら、この本程度なら1時間で丸暗記できますよ」
「わお、本当?ブラッド」

ブラッドは捲っていた本を一度閉じると、覚えたばかりの最初の5ページ分を一気に読み上げた。
ヴァレンは目を丸くして驚き、自分の両耳の上あたりに手をあて信じられないという顔をしている。

「どうです?ヴァレンティーネ様。こう見えても僕は記憶力には自信があります」

ブラッドは立ち上がり、騎士のポーズをとり誇らしげに頭を下げた。

「こう見えても・・・ って自分でいってるし」

呆れた表情のアンジェラ。

「エクサレント! 素晴らしいわ、ブラッド。人は見かけによらないわね」

それまでの固い雰囲気が一変したヴァレンはブラッドの両首にぶら下がるように抱きついた。

「ヴァ・・・ヴァレンティーネ様・・・」

ブラッドはヴァレンの言葉と行動のどちらにも虚を衝かれ、しばし立ちすくんだ後、
ヴァレンの細い体に恐る恐る腕をまわした。

「あん、もっと強く抱きしめて頂戴」

その様子を微笑ましく見つめているアンジェラの顔色は、元の透き通るような白に戻っている。
瞳を閉じて悦に浸っているブラッドの耳が、炎のように真っ赤になっていた。

教授会の決定
April,8 2045

12:45 ファンデンブルグ研究室

ヴァレンティーネ・ファンデンブルグが研究室のドアを開けると、初老の男の背が見えた。

「あら、教授、いらしてたの?」
「うむ、どうかね、ヴァレン。彼らは・・・ブラッドとアンジェラは、間に合いそうか?」

「ええ、あの2人はとても素直で飲み込みが早いわ、逸材よ」
「そうか・・・」

「立ち話もなんですから、どうぞ、お掛けになってください」

ヴァレンは、白衣のポケットから青のリボンを取り出すと口にくわえ、
自由になった両手で白銀の髪を両手で束ね、後で結んだ。
キッチンの棚から、ワイングラスを2つ取り出すと、ローゼンバーグ教授に勧めた。

「ワインはいかが?」
「いや、ワシはこれでいい」

ローゼンバーグは、白衣の内ポケットから小瓶を取り出し蓋を親指で回すと、
銀色の瓶の先を口へ運んだ。

「相変わらずですのね、教授は・・・」

ヴァレンは、グラスをそれぞれ元の場所へ戻し、下の棚のマグカップを手に取った。
保温にしていたコーヒーメーカーからガラスポットをカップに注ぐと、部屋中に香りが広がった。

「実はな、ヴァレン。ちと困ったことになってのう・・・」
「あら、教授、いかがなさいました?」

「うむ・・・昨日の教授会で・・・」

ローゼンバーグは、再び、小瓶を口に運ぶと今回の経緯を話し始めた。

「チェン教授は知っておろう」
「ええ、存じてますわ。あの中国系の派手な厚かましい女でしょう?」
「・・・ん、先のジパング派遣の件で、麻雀ならば、本場のチェン教授のゼミの学生を推すべきだ、と言い出しての」
「既に、決定事項でしょうに・・・」
「うむ、ところが、議長のヤン教授が妙にチェン教授に肩入れしとっての」
「まあ、あの色魔のオヤジときたら・・・全く見境がないのね」
「これこれ、勘ぐるでない・・・が、大きな金が動くには違いないからな・・・」
「何時なんですか? その決定戦の日程は」
「2週間後の月曜日だ。双方2名ずつの3回戦勝負と決まった」
「・・・本当に困った話だわね」
「とにかく、頑張ってくれ」

ローゼンバーグが部屋を出ると、ヴァレンは左手で頬杖をつき、大きくため息をついた。


「あと2週間か・・・彼らにはまだ、牌も触らせてないのよ・・・」

LESSON,1
April,8 2045

プロイセン国 ファンデンブルグ研究室

LESSON.1

「う〜ん」
ブラッドは、テーブルの上に肘をつき、両手で扇形に9枚のカードを開いたまま唸っている。
同じポーズをしていたアンジェラはコーヒーカップを口に運んだ。

「ほら、ブラッド。早くして」
「う〜ん」
と、再び呻き声のようなため息をつき、ブラッドはテーブルの上にオープンになっているカードを眺めた。
ダイヤを集めているヴァレンの前にはダイヤの2と7が捨てられている。

「これかな・・・えいっ」
と、威勢良く、右端から2番目のダイヤの3を叩きつけた。

「はい、私の勝ちね」
ヴァレンが手元の8枚のカードをオープンにすると、
1.2.3.4.5.7.8.9のダイヤのカードが並んでいる。

「あちゃ〜。また負けだ」
「その3は、ヴァレンの本命でしょ?」
「え〜、そうなのか?全然わかんなかったよ俺」
右手で頭の後ろを掻き毟りながら、ブラッドが頭を左右に振った。

「さっきまでのゲームは自分で揃えるだけだったろ?」
「うんうん」
「4組のカードを使うようになって、しかも自分が捨てたので5回連続で、ジ・エンドになるなんて呪われてるに違いない」
「あはは、そうじゃないのよ、ブラッド。これには一種の法則があるの」

ヴァレンは右腕をテーブルについたまま、自分の右手の甲に顎をのせて微笑んだ。

「法則? てっきりヴァレンティーネ様の魔術にかかったのかと・・・」
「バカ言わないでよ、ブラッド。カードゲームに魔術なんてあるわけないじゃない」
アンジェラが呆れたように笑っている。

「それでは、復習してみましょう。 いい?」
ヴァレンは、手前にあるカードで、
1.2.3
2.3.4
3.4.5
5.6.7
6.7.8
7.8.9
と、6種類の組み合わせを作った。

「4組のカードでこの6パターンがあるから、4×6で、24通りの組み合わせがあるのね」
「はい」
「その24パターンから、手元で3組を作っていくとすると・・・こうね」

ブラッドはヴァレンの手元と口元を慌ただしく見ている。
「いい?ブラッド。もし2組が揃っていて、あなたが2.4.5と持っていたら、どれを捨てる?」
「2・・・かな」
「そうね。じゃあ4.5.7と持ってたら?」
「7・・・ですね」
「そうね。ということは手の中には4.5とあるわけでしょ」
「はい・・・あ、そっか 3でも6でもジ・エンドだ」
「そうそう、基本だから覚えておいてね」

LESSON.2

「それでは、次はハートとスペードの2種類の4組で、アンジェラとブラッドの2人で勝負よ」
「はい」
「私は、一戦ごとにあなたたちのどちらかの後ろで見ているわ」
「よ〜し、タイマンなら負けられね〜ぜ」

ブラッドは腕まくりをしてカードをシャッフルし始めた。

「よお、アンジェラ。ランチをかけて勝負するか?」
「あら、ご馳走様。アタシはミラノのパスタ!でも、地中海のシーフードも捨てがたいわね・・・」
「パスタだ?俺は、ウィンナーと黒ビールをご馳走してもらうぜ」


学食 12:30

「やっぱり、フリウーリ地方のワインは情熱的でパスタによく合うわね」
「素敵なランチだわ、ありがとうブラッド」
「・・・ん」

(なんで女ってのは飯を食うときだけは機嫌がいいのだろう
・・・っていうか、学食にワイン持ち込むか?)


そんなことを考えながら、ブラッドは、短い返事をし、パスタをフォークでぐるぐる回している。

アンジェラ戦も5戦全敗だった。
目の前では、アンジェラとヴァレンがはしゃいでいる。

アンジェラ・クルツリンガー Angela Kurz Ringer 20歳。
地元の4年制小学校を卒業後、9年制のギムナジウムへ進学。
卒業後、1度目で国家試験のアビトゥーアに合格。
精神科医である父親の影響を受け、家から一番近くにあるローゼンバーグ総合大学医学部へ進学。
身長162cm 体重52�圈_搬押”磧∋舒貎諭�

ブラッド・エアハルト Brad Erhart 20歳。
州都にある12年一貫教育シュタイナー学校卒業後、2回目で国家試験のアビトゥーアに合格。
プロイセンでは、アビトゥーアの資格を持てば、自分の望む総合大学を選択することができる。
プロサッカー選手を夢見るも、致命的な怪我で現役を諦める。
その後、整形外科医となることを選択し、ローゼンバーグの門をたたく。
身長188cm 体重85�圈_搬押∧譟�兄弟無し。



「は〜、パスタの味なんて全く感じない。俺、ゲームに向いてないかも・・・」
「あら、ブラッド。そんなことはないわ。悔しさが人を強くするのよ」
「そんなもんですかね。もっとこう・・・なんていうか・・・」
「よほどショックだったのね・・・でも失恋よりはショックじゃないでしょ」

ヴァレンがブラッドの髪を左手でシェイクすると、指先からヴァレンの移り香が届く。

「は〜、いい香りっすね。ヴァレンティーネ様の胸で泣きたいっすよ」
「あはは、私の胸でよければいつでもお貸しするわ。・・・利子はきっちり払ってもらうけど」
「何言ってんのよ、初日から、大の男が・・・ほら、ブラッドもワイン飲んで」

紙コップに、BARONE ROSSOを注ぎながらアンジェラがブラッドに差し出した。

「しかし、アンタ達も大変ね。ジパングに行ったら3年は戻って来れないわよ。」
「え〜、3年もですか?」
「あら?ローゼンバーグ教授から聞いてないの?」
「ええ、まったくなにも」
「呆れた子達ね。恋人や家族にも別れを告げておきなさい」

飲み干した紙コップをトントンと机に当てながらブラッドがヴァレンに尋ねた。

「ジパングに行くのは、俺とアンジェラの2人だけっすか?」
「いいえ、私も行くのよ」
「本当っすか? 嬉しいな〜」

先ほどまで、俯き加減で食欲不振気味だったブラッドがパスタを頬張る。
その様子を微笑ましく眺めながらヴァレンが話を続けた。

「ええ、今のユーニオア・プロフェッサー制度だと、助教授職の任期があと5年しかないから、
3年間の滞在期間中に、私は新しい論文を書き上げて終身在職権を手に入れたいの。」

野心に満ちた瞳でヴァレンが、白銀色の髪をかきあげた。


ヴァレンティーネ・ファンデンブルグ Valentina Fandemblg 24歳。
ローゼンバーグ教授に、学部在籍中に助教授推薦を受け、
卒業論文が、学会に新風を起こし、時の人となる。
身長158cm 体重50�圈_搬押〔気�



「そんな大事なお仕事に、私達2人を選んで大丈夫なんですか?」

アンジェラが不安そうに尋ねる。

「あなた達2人は、とても優秀よ。それに・・・アンジェラ、こっちに来て座って」

ヴァレンはアンジェラを、ブラッドとの間にある席に座ると立ち上がり、
アンジェラの右頬に手をあて左側の耳元で囁いた。

「アンジェラ、あなたは・・・とても可愛いわ。今すぐ抱きたいくらいよ」

「じゃあ、私は研究室に先に戻るわ、14時までゆっくりしてていいから、ブラッド ご馳走様」
「はい」

ブラッドは白衣を翻し歩き出したヴァレンの後姿を、ヒールの音が聞こえなくなるまで見送った。

「はあ、綺麗だな〜ヴァレンティーネ様は・・・
ん? どうした、アンジェラ。昼間っから酔っぱらったのか?」

アンジェラは紅潮したまま俯いていた。

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