カゼノトオリミチ
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ゆるい灰色雲の下で キイキイと ヒヨドリたちは いっそう声を響かせる
柿の枝で ハナミズキの枝で
美味しいものが ここにあるよと 鳴き交わす
しとしと雨の朝 季節は急ぎ足
とおめいな空気を いっぱいに吸い込むと 私は
季節を映す ガラスびんになってる
茜色の葉や 朱色のバラの実と
枯れ草の丘を 吹いてきた風に つられて躍り出た 子スズメのうぶ毛やら
この秋の軌跡を いとおしく抱きしめる
さざ波のように 繰り返す日々も 寄せ来る静かな冬も
ここでこうして とおめいな手のひらで
受け止めてゆく
しなやかな季節の流れに 包まれて 励まされて ガラスびんのなかで
こげ茶の糸はお天気の日に
ひなたでまどろむ
ワンのしっぽの色ね
チリチリ小さな楽隊の
終わらない演奏会と
更けゆく夜の秒針を
ひとつひとつ拾っては
こげ茶の秋を 縫いとる作業
くふんくふんと
眠るワンのため息も ぬくもりも
その証も込めて
布を拾う
林檎色した紅茶で染めた
四角い布のはしっこに
深まる秋を 縫いとってゆく
水色のずっと遠くにある 3本のとんがり帽子が
西へと傾き始めた 温かいオレンジ色に 染まってる
誰かが物差しで 計ったように おんなじ高さで
鳥たちの合図には きっと
「あの3本のとんがり帽子の」
って言葉が 使われてる
水色には ふわふわの雲が浮かび
肌には風が冷たくなった
風の進路を南の国から 氷の国のほうへと 変えたのも
3本の大杉の木の 頭を揃えて切ったのも
思いがけず「コンニチワ」と ワタシの口から
小さなコトバが 飛び出したのも
どれもみんな 10月の精のお仕事の 仕業なのかも知れません
natu
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