へい太の日記

2002年06月07日(金) 雨姫を探して

マーレン マーレン マーレン
君のあの勇気で目覚めたはずの雨姫は どうしているんだい
もう一度あの洞穴(どうけつ)の奥底まで ゆっくり降りていき
見て来てはくれないだろうか

マーレン 
火の玉おやじの方は相変わらず元気にしているぞ
桜だって 蛍だって 半月も早めにやってきた
 
ついでのことだから ニイニイゼミやらツクツクホウシやらに
すぐさまご登場願って 七年と七日の命をおやじとともに
燃やし尽くしてしまえばいいと思うのだけれども
どうにもあのおやじ このまま居座り続けてしまいそうで
萩や薄の出番は コオロギといっしょに縛り付けられているに違いない

マーレン
雨姫は本当はどうしてる
これから見に行ってもらうわけにはいかないか

もしかすると 読みかけの絵本 閉じられた物語の中で
十と二年も井戸の前に佇み 眠り続けてしまったのではないだろうか
あのとき目覚めたはずの雨姫に 誰かが再び呪文を唱えることもなく
うつらうつらと夢と現(うつつ)を行き来していたのかもしれない

母の羊水の中で揺られつつ
橙の湯舟の中で揺られながら
シャワーノズルから幾筋もの恵みの雨がほとばしり出て
やがてはこの星の羊水へとそそがれゆく

カランから 茶碗の中へ
ボトルのまま ケトルの中へと
清浄な雨姫は注がれ売られてゆく
トイレの中では渦巻く宇宙が
汚(けが)れた水と共に吸い込まれゆく青方変移

曝気槽で再び息を吹き返す
そんなおまえらはみんな雨姫の影
井戸の前の雨姫は眠っているのか
それともおまえたちとともに歌っていたのか
雨姫よ 元気でいるかい

マーレン マーレン マーレン
すまないが もう一度雨姫の様子を見に行ってはくれないか
もう 私には精霊を見る力すら 残ってはいないのだ


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