へい太の日記

2002年06月10日(月) 雨姫を探して

マーレン マーレン マーレン
君のあの勇気で目覚めたはずの雨姫は 今どうしているんだい
もう一度あの洞穴(どうけつ)の薄暗い奥底まで ゆっくり降りて行き
そっと見て来てはくれないだろうか

マーレン 
火の玉おやじの方は相変わらず元気にしているようだ
桜だって 蛍だって 半月も早めにやってきた
 
ついでのことだから ニイニイゼミやらツクツクボウシやらに
すぐさまご登場願って 七年と七日の命をおやじとともに
燃やし尽くしてしまえばいいと思うのだけれども
どうにもあのおやじ このまま居座り続けてしまいそうで
コオロギの出番が 萩や薄の陰で縛り付けられているような

マーレン
雨姫は本当はどうしてるんだい
これから見に行ってもらうわけにはいかないだろうか

もしかすると 読みかけの絵本 閉じられた物語の中で
十と二年も井戸の前に佇み 眠り続けてしまったのではないだろうか
あのとき目覚めたはずの雨姫に 誰かが再び呪文を唱えることもなく
うつらうつらと夢と現(うつつ)を行き来していたのかもしれない

母の羊水の中で揺られつつ
橙の湯舟の中で守られつつ
シャワーノズルからは幾筋もの恵みの雨がほとばしり出る
やがてこの星の羊水へとそそがれてゆく

カランから 茶碗の中へ
ボトルの中から ケトルへと
浄められた幾筋もの流れが注がれゆく 売られゆく
トイレの中には渦巻く銀河が産まれ
汚(けが)れた星々と共に吸い込まれてゆく青方変移

曝気槽で再び息を吹き返す
そんなおまえたちはみんな雨姫の影
井戸の前の雨姫は眠っているのか
それともおまえたちとともに歌っていたのか
雨姫よ 元気でいるかい

マーレン マーレン マーレン
すまないが もう一度雨姫の様子を見に行って来てはくれないか
もう 私には精霊を見る力すら 残ってはいないのだ


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