2002年07月04日(木) |
光と闇の間(はざま) |
夕刻 沈んだ太陽 その増白により 兎の輪郭はさらに一層際立ち 朱鷺色に染め上げられた東雲からは 兎へと手が伸びる 北西の灰黒色の雲は次第に西へと回り込み 青黒から群青へと転ずる 西の空に輝きを増した一番星は木星かそれとも金星か
なぜ 流れる雲の消えゆく様を惜しむものはいない 誰も染め替えることができぬまま
誰そ彼時 風に靡く大地 産毛はまだ 半身が水の中に浸かったまま 楕円の月を映す川の流れには もじりから大気の中へと飛び込むオイカワの黒い影が いくつも木霊する
なぜ 川の水の流れゆく様を愛おしむものはいない
朱鷺色の雲はいつの間にやら白いシーツのようになり 青かった空の中へ溶けてゆこうとしている 楕円の月を映す川は さらに漆黒の鏡に変じてゆこう
生きている限り二度と巡り会うことのない 同じ川の水や同じ雲との出会い 見捨てられてしまう恐怖
生きている限りここに来れば出会うことのできる いつもと同じ川の流れや雲の流れ 見守られる安心
地に足をつけ 見回す限り出会うこともなく 風に靡く葉の海 風に流れゆく雲たちの流れ
また再び闇の中から 光が洩れてくる
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