へい太の日記

2002年07月20日(土) 光と闇の間(はざま)で飛ぶ

飛び上がる
鴇色に染めつけられた東の雲をつきぬけ 兎へと手を伸ばす
夕刻の雲に半身を遮られた沈みゆく太陽
その増白により 兎の輪郭はさらに際立ってゆく
北西の灰汁の雲は次第に西へ回り込み 瑠璃へと転じてゆく
西の空に輝きを増す一番星 木星 それとも金星か
なぜ この流れる雲の消えゆく様を惜しむものはない
誰も染め替えることなどできはしないからか

一気に地上すれすれまで降りる
黄昏の風に靡く大地 淡萌黄の産毛はまだ半身 水の中
楕円の月を映す 鉄の川の流れに沿って飛ぶ
もじりから大気の中へ飛び込むオイカワの影が いくつも木霊する
なぜ この川の水の流れゆく様を愛おしむものはない
誰も止めてしまうことなどできはしないからか

ふと見上げれば
鴇色の雲はいつの間にやら 白いシーツ
かつては空色の 藤の空へ溶けてゆこうとする
楕円の月を映す鉄の川は さらに漆黒の鏡に

今を過ぎゆく川の流れ 流れゆく雲と出会った
再び巡り会うことのない 
それは見捨てられてしまう畏れか
それとも 
いつもと変わらぬ顔をした川の流れ 流れゆく雲との巡り会い
ここでまた出会う
それは見守られる安心なのか

静かに大地に足を降ろし 肺の奥まで息を入れる
ただ一人 風に靡く淡萌黄の絨毯と
風に流され変じゆく雲の間(ま)に輝く月との間(あいだ)には
見回す限り人の姿はなく
生きる 生きている 生かされている

輝きを増す兎を見上げ 再び今度は遙か月まで 飛ぶ
クレーターを掘り始める
ひたすらクレーターを掘る
とりあえずクレーターから
いくつも掘る まだまだ掘る クレーター掘り
見上げてもここに雲の流れはない
見回してもここに川の流れはない
ただ時という風と水に流されて 地球が暮れてゆく

何のため クレーターを掘っているかは 知らないし
何のため クレーターを掘っているかを 見つけようとして
クレーターだけが残り 何もかもを無くしてしまう
知っているのにがむしゃらに掘り続ける姿と
時に身を委ねて徒に過ごす姿とが見え
余った時に満足すべきだろうに
どれもが現のようで どれもが虚ろのようで
うまく付き合うことなどできはしない
抱えていることも 満たしても
すべては無に帰することも
何もしないまま過ごしても
徒労に終わるにしても
こんな風に考えてることすべてを捨て去ることも含めて
抱えて生きる
すべてがあってすべてが無

きっと再び闇の中から
光が洩れてくる
さあ 戻ろう


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へい太 [おてがみ] [へい太のほむぺ]

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