へい太の日記

2002年07月07日(日) 光と闇の間(はざま)で

夕刻の沈みゆく太陽 その増白によって 兎の輪郭はさらに際立つ
朱鷺色に染め上げられた東雲から 兎へと手が伸ばされる
北西の灰黒の雲は次第に西へと回り込み群青へと転ずる
西の空に輝きを増す一番星は木星なのかそれとも金星か

なぜ 流れる雲の消えゆく様を惜しむものはいない
誰も染め替えることができなかったからなのか

黄昏の風に靡く大地 黄緑の産毛はまだ
半身を水の中に浸けたまま
楕円の月を映す川の流れには
もじりから大気の中へと飛び込むオイカワの黒い影が
いくつも木霊する

なぜ 川の水の流れゆく様を愛おしむものはいない
誰も止めてしまうことなどできなかったからなのか

朱鷺色の雲はいつの間にやら白いシーツのようになり
かつて青かった紫の空の中へ溶けてゆこうとする
楕円の月を映す川は
さらに漆黒の鏡に変じてゆこう

生きている限りもう二度と巡り会うことはない
今過ぎゆく川の流れ 流れゆく雲との出会い
それは見捨てられてしまう恐怖なのか

だのに 生きている限りここに来ればまた出会うことができる
いつもと同じような顔をした川の流れ 流れゆく雲との巡り会い
それは見守られる安心なのか

この大地に足を降ろして深く息をする
見回す限り人と出会うこともなく
やがては大地を覆い隠す風に靡く黄緑の葉の海と
風に流されゆく雲の海に出会う

生きる 生きている 生かされている
これからしなければならないことと
しておきたいことの
いくつかを頭の中に思い浮かべてみるが
結果を心待ちにしているようでもあり
泥沼のように広がる苦しみのようでもあり

一人淋しく穴掘りを続ける姿が見える
ひたすら穴を掘り続ければよいのだろうか
たくさん穴を掘ればよいのか
あちらにも穴が必要なきがする
とりあえずこの穴からはじめることにしよう
やりやすいところからはじめればいい

全部やらなくちゃ バランスを取りながら
できないなら一つにこだわり抜かなくちゃ 渡り歩きながら
時の風と時の水に流され 日が暮れてゆく

何のために穴を掘っているのか 知らないけれど
何のために穴を掘っているのか 答えを見つけようとしている
何もかも無くなってしまうことを知っているのに
がむしゃらに掘り続ける姿と 時に身を委ねて徒に過ごす姿と
どちらの自分の姿も見えるようになり
それからは残された生 余った生 満足すべき生なのに
まだ何が生きることなのか 見極めねばならないのか
確かに何かを続けなければ何も進みはしない 何もできあがりはしない
しかし 結局どれもが現のようで どれもが虚ろのようで

なぜ欲しいものがあるのだろう
欲望と願いにうまくつきあえない
どうせ何もかも無くなってしまうのにどう進めばよいのか
何もかも無くなってしまうことを知っているのに
欲望を持ち続けるのだから
すごい欲望の固まりということになる

欲望を抱えていることも
欲望を満たしても
すべては無に帰することも
何もしないまま過ごしても
失敗に終わるにしても
すべてを抱えて
こんな風に考えてることをすべて捨て去ることも含めて
抱えて生きる
これがすべてがあってすべてが無

きっと再び闇の中から
光が洩れてくる


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へい太 [おてがみ] [へい太のほむぺ]

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