*黎明ノォト*

2008年04月03日(木) 自然に還されたもの


通りがかりに、気になる樹がある。


桜だ。


いわゆるソメイヨシノではなく、
葉と花がほぼ同時に芽吹き・ほころぶ、
花弁がソメイヨシノよりも白っぽい、あの桜。
(ここ数年のお気に入り)

広い敷地を持つ工場らしい土地の
忘れられて枯れがれした一角に
その桜がある。

三本ほど並んでいるようだが、
冬に合わせてからからに乾いた蔓性の植物が
うっそうとその樹にからんでいて、
かろうじてその隙間からちらりとのぞいた花に気づかなければ、
それが桜だと気づくこともなく春は終わっただろう。

蔓の重みで枝や花はやや垂れさがり、
華やかに爛漫、とは言いがたく申し訳なさげに
それでもきちんと咲いている。


それが桜だからといって、
誰ひとりその一角に手を入れなかった、
その心意気が私は好きだと思った。


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すでに桜の美しさはひとり歩きをして、
どこでもほとんど同じような、見たことのある華やかさだけ。

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桜は美しいですが、
夏になれば毛虫もいれば、蚊柱も集う。
景観が良いのか悪いのかは微妙なところ?

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夏も過ぎ、
色づいた葉が落ちるころ、
その桜にはちいさな命がまどろんでいる。
それはある寒く冷え切った朝早くに、
みんないっせいに目を覚ます。

幽かな朝の光に薄い翅を透かし、
ひらひらと音もなく、
あそことこことそこで
ふらふらと飛びはじめる。


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那音 [MAIL]

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