「むかし愛した形」なんて、なんだか意味深ですが、 これは字面そのまま「むかし」「すきだった」「かたち」の物質、ということ。
可愛げのない幼少期(性格・容姿ともに)を過ごした私だけれど、 振り返ってみれば、ずーっとずーっと長きにわたって、 アクセサリーがとっても好きだった。
学校では身につけられないので、お休みの日のお出かけくらいだけど、 いつも首にはなにかぶら下げていた。 年長の従姉妹からお下がりでもらうアクセサリーが おとなっぽく見えてほくほくしていたもの。
あのときのプラスチック石の質感や、ガラス石の色や反射、 シルバースチールのきらきらのほんの一部分が いまでもふとフラッシュバックすることがあって、
そのむかし愛した形に似たディテイルを持つ、 実質はすっかり大人のものである美しいアクセサリーを見たときに、 「妙に惹かれるこの形は、あのときのプラスチック石を留めていた金具と似ている、」 などと思うことがある。
そして結局、私は小さい頃のあこがれを追って、 まだまだここにいるんだなと感じる。 「ニセモノ」が「ホンモノ」になったのは、ただ身体に見合うものに置き換えただけで、 本質的にはほとんど同じこと。
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