いつもは 帰りが心配だから と 見送らせてくれなかったあなたも あの日はなにも いわなかったね
ふたりで並んだホームのベンチ 着替えと想いがつまったバッグ 急行が止まる駅だけど 各駅で行こうと あなたが言う
何本も見送って 腰をあげた どちらからともなくつないだ手
ターミナル駅の改札で これ以上は送らないでとあなたが泣く 別れた理由もなにもかも いまも想い出になりきれずにいる
コンコース 人に紛れて いまと同じ 短い爪を すこしだけあなたのほほに立てて 長いながい キスをした
爪を切る音すら いまもせつない ひとりきりの冬の夜
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