「いつもにこにこ・みけんにしわなし」
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「みんな〜、あちょぼうよぉ〜。」 と、ハルが両手をバンザイしておいでおいでと手招きをしている。
たぶん、なにかの幼児番組のおねえさんのマネではないか、と思う。
あちょぼうよぉ〜を真に受けて はぁ〜い、とハルのそばに招き寄せられてみると、 「ぐふぅん。」と両手で顔を覆ってテレなさるのだ。 遊ぼうよ、と呼び集めたところで なにかの遊びを仕切りまわすわけではないらしい。 この年で仲間を呼び集めて仕切るとこまでやられたら チョトコワイのでそれはそれでいいのだが。
夜ご飯をみんなで食べていたら イスの上に立ち上がって、 「みんな〜、あちょうぼうよぉ〜〜!」と得意のポーズ。 どうやら、機嫌がよくノリノリのときに叫ぶ傾向にある。 そうか、うまかったか、トマトソーススパ。
あちょぼよぉ、の舌足らずさがかわいいので、 兄姉みんなが笑顔でまねをする。
「ハーちゃんも、あちょぼよ〜。」 「あちょぼよ〜。」
ところが。 お気に入りのスローガンを横取りされたのが気に入らなかったと見える。
イスの上に立ち上がったまま、 たれ眉に半眼で口をへの字に曲げ、手をダランと下げて 冷ややかに兄姉を斜めに鼻の先から眺め始めた。
「な、なんか、ゲンナリしてはるで。」
あちょぼよ〜て、かわいいなぁ、とニコニコしながら夕飯を食べていた兄姉が え?とハルを振り返ってみると かわいいはずの妹が、 今日はもうお店は終わったのよの場末の酒場のママみたいになっている。
「ゲンナリしてる〜。」 「ハーちゃん、なんでそんなにゲンナリ〜。」 「ゲンナリしすぎやで〜。」
ハル、ゲンナリという言葉のシャワーを浴びて、 おお、そうか、これがゲンナリか、とわかったようです。 やだなぁ、もう。
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