Just A Little Day
目録過去未来


2007年01月04日(木) 昼過ぎ

午後のリビング。
西に傾きはじめた陽が、テレビに反射して眩しい。
1月4日。世間は仕事始め。12時過ぎに起きたあたしは、コーヒーを飲みながら洗濯機を回し、食器洗浄機によごれものを入れ、掃除機をかけた。
台所では食器が水音を立てて洗われている。

もう何度も見たビデオを再生し、4杯目のコーヒーを注ぐ。
今や伝説になってしまったバンドの、伝説になったライブが流れる。
戦場に散った兵士が50年後の世界へ恋人を捜しに甦る物語。

足元では犬が、あたしの脚にしがみつき、一心不乱に腰を振っている。

「人も犬も、たいして変わらないな。」

小さな頭のてっぺんを見つめ、そんなことをぼんやり考える。人も犬も、獣だもの。


正月は散々だった。
元旦は彼の実家、2日はあたしの親戚への挨拶まわり。
彼と、あたしと、犬。
皆が遠慮がちに、でも有無を言わさないかんじであたしたちに訊く。

「で、結婚は?」

彼はその度に困った顔をし、あたしが答える。

「ありませんね。」

それ以上訊いてくれるな、という思いを込めて発せられたその言葉に、あたしの親戚は困った顔をした。

去年一年間、あたしが彼に問いつづけたこと。

「ねぇ、あたしと結婚する気、あるの?」

年末に気が付いた。あたしたち、きっと結婚しない。

それにしても、あたしたちは色々と拾いすぎたらしい。
動けなくなるのは厭だ。

正月のあいだじゅう、あたしはあたしじゃないみたいだった。
誰の云う事も、あたしには届いていなかった。
身体中の針を逆立てて、必死に抵抗していた。

「誰も近寄ってこないで」

一人になるのは怖いくせに、あたしは一人になりたがる。

テレビから、ロックスターが唄う。

 君は馬鹿じゃない 君は馬鹿じゃない 君は馬鹿じゃない




奇妙に明るい音がして洗濯が終わった。
これを干したら、夕飯を作らなくちゃ。
結局自分が何を考えていたのかなんて忘れて、あたしは家事に戻る。
結局自分が何を書きたかったのかなんて解らぬまま、あたしは「主婦」に戻る。


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