「にこにこばかりもしてられない。」
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旧姓のままの口座が、大阪の銀行に残っていることが発覚。 しかもその銀行、2月13日でつぶれるそうだ。 解約しに行かなきゃ。 通帳もカードもない。 電話したら、改正届・住所変更・喪失届け・解約手続きの段取りだそう。 戸籍抄本がいるといわれてとりに行く。
市役所のカウンターで、市章の入った用紙に プリントアウトされた抄本を受け取る。 戸籍抄本、横書きになって、データが直接プリントアウトされるようになったのね。
父の名前を久しぶりに見た。
中学のときに、高校受験の準備で、担任から各自に各自の抄本が配られた。 なぜ、学校からそんなものが配られたのかはよくわからないが、 ホームルームのときに、一人一人に手渡された。 名前を呼ばれて、1人ずつ前にとりに行く。 私の名前を呼んだ担任は、なぜかチラッと私を見て、抄本を渡した。
原本のコピーの縦書きの戸籍抄本。 長女として私の名前が載っている。 その下に、父の名前があった。
父の名前は大きく×で消され、 その上から黒々と、「死亡」と書き込まれていた。
動けなくなった。 停まったまま席に戻れない。 目がその文字から離れない。 胸の奥が痛くなって、のどに熱い塊が上がってきた。
担任は、最低だった。 固まっている私に気がつくといった。 「そう書くんやから、仕方ないやろっ」
わかっている。 理解はできている。
だけれど、 私の父さんを。 父さんが存在していたことを。 否定された。 こんなに醜いやり方で。
席に戻って、教室で私は泣いた。
今日もらった抄本には、父がいた。 たった二文字だが、消されずに、 父が私のすぐそばにいた。
帰りの車を運転しながら、やっぱり泣いた。
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