弱Sonファイブ
なんのことはない。 山手線に乗り込む。 ドアが開閉するそばに もたれる形で立つ。 1分ほどしたら ドアが閉まります ご注意下さい というメッセージが 流れる。 プルルルル という音が鳴って プシューとドアが閉まる。 目の前で 男が女に話しかける。 男の年は24くらい 皮ジャンにジーパン 身長のわりに顔がでかい カバ面。 女は20前後で 白いコートをはおって 身長のわりに顔が小さい ヘビ面。 ヘビがカバに言い返す。 「あたしずっと西口で待ってたのに どうして東口にいたの? どれくらい待ったかわかってる? すごく心配したんだよ」 「そんなこといっても知らねえよ。 なんでお前そんなことで おこってるんだよ!」 「おこってないよ。あんたが勝手に おこってるだけでしょ?」 「オレはおこってない。 理由を聞いてるだけだろ。 お前こそ何不機嫌になってんだよ!」 「あんたがくだらないことで ガタガタ言ってるからでしょ」 「何おこってんだよ!」 「おこってないって」 「おこってるじゃねえか、 認めろよ!」 「わかった、 もうウザいから話しかけないで」 「なんだその口の聞きかたは。 もうすぐ別々に降りるのに なんでこんなことで 言い争わないといけないんだよ?」 「...」 「勝手にしろ!」 「...」 しながわー、 しながわー、 ... プシュー。 ... ... ... 降りていった男を 自分の瞳に映しながら 腰にまわしている手に 少し力をこめて 君を引きよせてみた。 それでも君は 自分と反対の方向を向いて、 AERAを開いている 40代の寡黙なスーツ姿の男と、 スキ間を空けるのが 罪と思われるくらい グアムとサイパンの話を 強制的に排気しつづける OL2人組との間に 瞳を固定しつづけていた。 ... BirdEyesView。 計量スプーンで計られた 正しい温度を持つ瞳。 |