やんの読書日記
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2003年03月16日(日) |
黄金の騎士 フィン・マックール |
ローズマリ・サトクリフ作 ほるぷ出版
ケルト神話というと 魔法使いや妖精が多く出てきて人の信念が理想的で近寄りがたいものだと、 ずっと思っていた。 はじめに読んだのがイェイツの妖精物語だったからだろうか サトクリフのケルト神話は竪琴ひきが語るように詩のようにきれいだ。 クールの息子フィンが死んだ父の座であった騎士団の長を取り戻し、 騎士団をもりたてて比類のない英雄になり、 老いの中で権威を失墜して死んでいくという筋書き。 どこかで聞いたことのあるような怪物退治、 読んだことのあるような戦いのシーンが出てきて不思議に思った。 それはグリム童話やチベットのものいう鳥、 アラビアンナイトなどに影響を与えているような気がしてならなくなった。 中でもおもしろかったのは、フィンが犬を怪物から手に入れる場面。 コナンという名の大食漢。コナンはケルト人の名前だったか (ホームズの作者、某アニメの主人公・・) ディアミッドが死す場面は、呪いから逃れられない運命と言うものを 信じているケルトの性を思い知らされた。 フィンの孫オスカがディアミッドをかばって、 ケルトの誓いを立てるところがまた感動的だった。 命をかけて信念を通すケルトの人々は、再生を信じているからこそ 勇敢に戦える。 そういう信念を今は魔法と言うようになってしまったらしい。 ハリーポッターで読んだことのある「黒魔術」が フィンにかけられて彼が命を落としそうになったとき、 渡し場で必死に敵と戦った 彼の息子たちに拍手を送りたい。 そしてフィンの老醜は見なかったことにしておきたい。
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