やんの読書日記
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2004年06月08日(火) シー・ビスケット

ローラ・ヒレンブラント作
ソニー・マガジンズ


アメリカの大恐慌時代に
大人気だった競走馬の実話
シー・ビスケットという名の手のつけられない駄馬
がどのようにして実力ナンバーワン、人気ナンバーワンの
馬になっていったか。
見放されて打ち捨てられていた馬と
馬主と調教師と騎手の出会いが、
ドキュメンタリーでも見るように
鮮やかに詳しく書かれている。
競馬は馬だけではなく、4者がひとつになって初めて
成り立つ競技なのだということをわからせてくれる。
調教師のトムの目利きがすばらしい。
そのトムを発掘した馬主のハワードもすごい
さらに、馬の性格を知り尽くして
馬と一体になれる騎手ポラードはもっとすごい

ポラードは片目が見えなくなって
騎手生命も危ういというのに不屈の精神というのか
騎手としてもって生まれた天性というのか
馬への愛着というのか
そういうものをすべて溶け合わせて力を発揮する。
大怪我をして騎乗できなくなったとき
代わりにシービスケットに乗るウルフと作戦して
最大の敵ウォーアドミラルにきっちりと勝つ
ところで胸がドキドキした。
怪我で再起不能に陥ったポラードが
シービスケットの引退戦のサンタ・アニタハンデ戦で
有終の美を飾ったところなど
読んでいてゾクゾクした。

実力をつけて他の馬よりも負担斤量が多くなった
シービスケットを気遣い、他の調教師に
自分の調教を悟られないよう苦心するトムは
努力家以上の策略家だ。

自転車修理業から身を起こしたハワードが
シービスケットとポラードに対する愛情は
父親のような感じだ。


苦しい時代にひとつのことに人生をかけられる
人間。それに答えた馬一頭。
人生を一つのことにかけられる
単純だけれど前向きでひたむきな
そういう人間と馬が生んだ感動の実話なのだ











アカデミー賞にノミネートされてから
この本の存在を知ったのだが
映画を見る前に読んでよかったと思う。


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