Shigehisa Hashimoto の偏見日記
塵も積もれば・・・かな?|それまで|これから
昨日のことである。民俗学の授業中、先生に指示されて文章を数行音読することになった。私は詩などを朗読をするのが結構好きなので、今回も調子に乗って抑揚をたっぷりつけていい気になっていたが「悪漢(ゴロツキ)」を「あくかん」と読んですぐさま情けない馬脚をあらわしてしまった。先生は思わず苦笑い。私は顔をゆで上がったタコの如く赤くして虫のように黙りこくってしまった。顔の赤みは授業が終わるまで引くことはなかった。
私が読み間違いをやらかしたのは何も今回に限ったことではない。小学校の5年生の時には「厚生省」を「あっせいしょう」と読んで担任の先生に大笑いされた。中学の漢字テストでは「血眼」を「けつがん」と書いて大ペケをくらった。「怪我」を「かいが」と読んでクラス中を笑いの渦に巻き込んだこともある。緊迫した授業が一瞬にしてに和らぐのだから他の人からすれば愉快なことなのかもしれないが、当人は劣等感に似た感情を植え付けられた気分になってすっかり落ち込んでしまう。
このように文字の読み間違いは大変恥ずかしいことである。だが、私たち素人が間違えたところで大勢に影響することはまずないからまだかわいいほうではある(自分で言うのもなんだが)。しかし文章を読むことにおいてはプロであるはずのニュースキャスターでもとんでもない読み間違いを犯すときがある。ニュースは正確性が重要なのだから滅多なことでは間違いは許されない。にもかかわらず、注意深く耳を傾けていると文章や言葉を誤読しているアナウンサーがかなり多いことに気づく。
特に地名にまつわる間違いが多いようだ。大分昔の話であるが、ある女性キャスターが五街道のひとつ「旧中山道(きゅう・なかせんどう)」を「いちにちぢゅうやまみち」と読んだのを聞いて大爆笑してしまったことがある。「旧」を「1・日」と分けて読んでしまう強引さが凄い。しかもこのキャスターは読んだあともシラっとして悪びれる素振りも見せなかった。読み間違いのマヌケさとのギャップがまた可笑しさを誘った。こんな面白い間違い方をする人はそうそういないだろう。ただ、これは特殊な地名であるし、知名度としてもやや低いのでまだ許そうという気も起こる。しかしこれよりもはるかに有名な地名でさえ信じられない間違い方をする人もいるから困ったものである。確か日本テレビの番組であったと思うが、ある日スポーツニュースの中で近鉄バッファローズの中村紀洋選手のことを「浪速のホームラン王」とテロップつきで紹介していた。だが、担当したアナウンサーはこのフレーズを「ろうそくのホームラン王」と読んだ。「浪速」すら読めない人がアナウンサーをしていてよいのだろうか。「浪速」は大阪の有名な区のひとつだから「旧中山道」を間違えたのとは訳が違う。言うまでもなく、一瞬のうちに私の心のなかで日本テレビの株が暴落してしまった。
もし文章を読んでいるときに見慣れぬ単語を目にしたら、近くにいる誰彼に構わず読み方を聞いたほうがいい。独り善がりの推測で高をくくって、挙句公けの場で読み間違えるよりは何倍もましである。辞書では調べようがないから家族や友達にそういう道に明るい人がいると大変助かる。私の場合、父が結構な読書家であるのが幸いしている。もし父に知らない言葉の読み方を聞いていなかったら、私が恥をかく回数はもっと増えていただろう。ともあれ、人前で惨めな思いをしたくないのならある程度の苦労は覚悟せねばならない。時には涙ぐましい努力も必要なのである。
橋本繁久
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