少し前の新聞に 雪のなかから掘り出した ふきのとうの記事が載っていた ふとそれを思い出し 創立記念日でオヤスミの下のコを誘い いつもの場所へ出かけた
もうどこも雪は融けているのだけど 用心して長靴を履いて正解だった 枯れた草の上は スポンジが水を吸ったようになっていて 去年ふきのとうの宝庫だったところは 泥も混じってぐっちゃぐちゃ
小さな蕗の葉っぱを目印に あたりをひととおり探してみたけれど これが全く見つからない 蘭科の植物の球根みたいのとか 根っこのかたまりとかばかりが目立つ 一度見たところを戻ろうとしたら あきらかに一度踏んだところに 泥まじりで先が赤っぽくなったのを発見
なるほどー 去年の春の盛りのを思い描いていたけど この時期は周囲の様子と一緒に ふきのとうもカモフラージュされているから よくよく注意しなければ発見できないのだ ムスコは木の枝を拾い それで枯れ草を払って探すことを思いついた すると次から次へと見つかりだした
来た道を戻って 小高い畑の脇も探していたら 自転車でふざけていた二人組の男の子のひとりが ふきのとう見つかりますかと聞いてきた 自分も昨日甘辛く炊いたのを食べたと言うので ちょっと驚いた 見たところその子はハタチ前後で ふきのとうの味とイメージが重ならない
あえて知らない人に話しかけるという行為は ちょっと勇気がいる しかもそれを いちばん苦手とする年齢のようなのに 食卓に上った春の味が ちょっと嬉しかったので 素直に話し掛けてみたって感じだった
なあんかいいじゃない でもひょっとするとこの辺りじゃ 普通のことなのかしらん
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