久しぶりに製作材料以外の買い物をした なんかこう社会に出て 初めてのお給料もらった気分にも似て 服を売って稼いだお金は いつも心配を掛けている身内に 何か贈りものをと考えた
かと言って 服というにはサイズもあるし それはおいおいということにして Hさんの親戚の鞄屋さんで選ぶことに 鞄屋と言ってもそこはお店ではなく 社長が自らひとりで イタリア製の革をなめし しこしことミシンを踏んで作っている
革は半端ものを安く手に入れているので 大きさがまちまちの一枚から 出来上がるバッグの大きさもいろいろ それでも絞られたいくつかの 定番を見比べながら値段を聞き 悩みに悩んで選んだのだった
全工程正真正銘の日本製 卸で出すとしたら 市場に出るまでに 少なくとも二社は間に入り それぞれが価格を乗せて たぶんとても気軽には買えない値段になる
ネットで売らないかとHさんに言われ 即座に断わった どれもまるで革とは思えないような 精妙な表面加工が施されていて その素材感を画像で伝えるのは 到底わたしには無理に思えた
触るとしっとりとしているのに 光線の加減でつやが出る 技術のないわたしが撮れば ただ安っぽく見えてしまうだろう 何枚撮ったか解らない陶器のように いくら敷物を変えても照明を工夫しても 撮れば撮る程悩みそうだった
人の物を代わって売るのは簡単な事じゃない 売れなければどこかで その良さを伝えきれなかった自分を責めることになる まだ直接お客さんに対してなら その都度反応を見ながら 言葉を重ねることができるけれど 今更ながら ネットでモノを売ることの難しさを思った
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