昨日は 予定より早く50本を納品 そのついでにあちこち走り回って 細部の工程を頼める場所を 探してきたらしい佐藤さん もう本当にお尻に火がついているはずなのに 決してバタバタとあせっている風には 見えないのが不思議だった
戻るとまたぞろ バスケットの先の注文が入り 一週間留守にする予定の奥さんが 先にずらそうかと心配して言った すると佐藤さんは 自分の用事はちゃんと済ませて その他の時間でしたらいい と言うのだった
そういうとき とくべつ威厳がある訳でもなく どちらかと言えば さらっとした口調なのだけれど その分聞いているこちらも 気持ちがすっと軽くなる
できないことを 無謀に受ける訳にはいかないと 一番基本になる木枠の釘うちを してくれる所が見つからないので 必ずとは約束できないからと 電話口で言っていた
たぶん これ程納期が詰まっていなかったら 佐藤さんひとりで 全部やってしまうだろう できないと言いながら もし見つからなかったら 今からだって自分でこなすに違いない
うっかり一件寄るところを忘れた そう言う佐藤さんに奥さんは 完璧だと思っていたのに安心した なんて言っていた 決して自分以上に自分を作ろうとせず 真摯に掛けられた負荷に向かって 最大の努力を傾ける
これまでいろんな所で働いて 本当にたくさんの人に出会ってきたけれど 佐藤さんほど 人として上司として 尊敬できる人はいなかった ただバスケットを預かって売ることを そのままよしとして続けていたら きっとこんな貴重な機会は 訪れなかっただろうと思う
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